フランチェスコ・アルバーニ

フランチェスコ・アルバーニ（Francesco Albani）

フランチェスコ・アルバーニ（1578年 - 1660年10月4日）は、バロック初期のイタリアを代表する画家の一人であり、「ボローニャ派」の中心的な存在です。

生涯と初期の活動

アルバーニは、ボローニャで絹商人の息子として生まれました。父からは家業を継ぐことを期待されていましたが、彼は絵画の道を選びます。12歳になった頃、フランドル出身でボローニャを拠点に活動していたマニエリスムの画家、デニス・カルヴァールト（Denijs Calvaert）に師事し、画家としての修行を開始しました。カルヴァールトの工房では、後にイタリア美術史に名を残すことになるグイド・レーニも同時期に学んでおり、アルバーニはレーニとの交友を深めました。

その後、アルバーニはレーニに続いて、ボローニャに設立された画期的な絵画学校「アカデミア・デリ・インカミナーティ」に加わります。このアカデミアは、アンニーバレ・カラッチ、アゴスティーノ・カラッチ、ルドヴィコ・カラッチというカラッチ兄弟によって運営されており、従来の徒弟制度とは異なる、より理論的かつ実践的な教育が行われていました。ドメニキーノ、ルーチョ・マッサーリ、ジョヴァンニ・ランフランコなど、多くの優れた画家たちがこのアカデミアから輩出されており、アルバーニもここでボローニャ派の写実的な技法と古典主義的な理想を学びました。

ローマでの活躍

1600年、アルバーニはアカデミアの師であるアンニーバレ・カラッチを追ってローマに移り住みます。ローマでは、アンニーバレ・カラッチの助手として、また友人グイド・レーニと共に、当時教皇庁の主要なプロジェクトの一つであったパラッツォ・ファルネーゼのギャラリー装飾（カメリーノ・ファルネーゼ）に携わりました。当時のローマでは、教皇クレメンス8世の治世下、政治的な背景も相まってボローニャ出身の画家たちが厚く遇されており、アルバーニもこの流れに乗って重要な依頼を受けることになります。

ローマ滞在中、アルバーニはサン・ジャコモ・デリ・スパニョーリ教会などの教会建築においても、レーニと共同で壁画や祭壇画を制作しました。

イタリア各地での活動

ローマでの成功を収めた後、アルバーニはイタリア各地を転々としながら制作活動を続けました。1609年には一時ボローニャに戻り、続いて1609年から1610年にかけてヴィテルボで活動しました。1610年から1617年までの約7年間は再びローマに滞在し、制作の中心地としました。その後は故郷ボローニャを主な拠点としながらも、マントヴァ（1621-1622年）、ローマ（1623-1625年）、フィレンツェ（1633年）など、イタリア各地の宮廷や教会からの依頼に応じて移動し、数多くの作品を残しました。

画風と主題

アルバーニは、宗教的な主題に加え、特に神話を題材とした装飾画を得意としました。彼の描く神話の世界は、理想化された人物像と豊かな色彩、美しい風景描写が特徴であり、優雅で牧歌的な雰囲気を醸し出しています。特に、子供（プットー）を描写する才能に長けており、作品に遊び心と軽快さを加えています。

弟子と後世への影響

アルバーニの工房からは、カルロ・チニャーニやアンドレア・サッキといった優れた画家たちが育ちました。彼らは師の様式を受け継ぎつつ、それぞれの個性的な画風を確立し、後の世代に影響を与えました。アルバーニ自身は、カラッチ兄弟が開いたアカデミアで学んだ古典主義的な理想と、ボローニャ派特有の感情表現と写実性を融合させた独自のスタイルを確立し、17世紀イタリア絵画史において重要な一角を占めています。

彼の作品は、その優美さと洗練された構図により、多くの人々に愛され、特に17世紀後半から18世紀にかけてのフランス絵画に影響を与えたとも言われています。

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