フランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤー

フランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤー（1766年 - 1803年）は、モーツァルトの遺作「レクイエム」を補筆・完成させたことで今日最も広く知られるオーストリアの作曲家です。彼の名前は、クサヴァー、クサーファー、ジュースマイアー、ジュスマイヤーなど様々な表記が用いられますが、ズュースマイアという発音がドイツ語に忠実とされます。

ジュースマイヤーはオーバーエスターライヒ州シュヴァーネンシュタットで、学校教師も務めた教会堂番人の息子として誕生しました。幼くして母親を亡くした後、13歳で故郷を離れ、クレムスミュンスターのベネディクト会修道院で学びました。1779年から87年にかけてこの修道院で聖歌隊員として過ごしましたが、変声期を迎えてからは学生オーケストラでヴァイオリンを担当するようになりました。この修道院ではオペラやジングシュピールの上演が盛んに行われており、ジュースマイヤーはグルックやサリエリといった当時の著名な作曲家の作品を深く研究する機会を得ました。彼はこの時期に修道院のために数多くの教会音楽や舞台作品を手掛けています。

1787年以降、ジュースマイヤーはウィーンに移り、イタリアの著名な作曲家アントニオ・サリエリに師事しました。そして1791年にはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの制作活動を補佐し、歌劇「皇帝ティートの慈悲」や「魔笛」といった作品の浄書を行いました。彼はモーツァルトとの間に親密な関係を築いていたと伝えられています。

長年にわたり、ジュースマイヤーはモーツァルトの正式な弟子であったと信じられてきましたが、モーツァルトの妻コンスタンツェが「レクイエム」の完成を彼に託した正当性を主張するために、弟子であったという話を強調あるいは創作した可能性も指摘されています。

モーツァルトが臨終を迎える頃、「レクイエム」の作曲が話題となり、彼の死後間もなくジュースマイヤーがその補筆作業に取り掛かりました。伝えられるところによれば、彼は約100日間でこの未完の大作を完成させ、コンスタンツェに引き渡しました。ジュースマイヤー自身は後に、多くの音楽家が補筆の依頼を断る中で、最終的に自分にその重責が回ってきたと回想しています。

ジュースマイヤー版の「レクイエム」は、その様式がモーツァルト本来のものと異なるとの批判も少なくありませんでした。そのため、後に様々な研究者や作曲家によって新たな補筆版が作られることになります。しかし、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがこの版を擁護したこともあり、ジュースマイヤー版は今日でも最も広く演奏され、親しまれている完成形となっています。また、ジュースマイヤーはモーツァルトの最後の「ホルン協奏曲」（K.412+514）の未完部分であるロンド（K.514）も補筆しています。

モーツァルトの死後、ジュースマイヤーは自身のキャリアを確立していきました。エマヌエル・シカネーダーの依頼で作曲した歌劇「モーゼ、またはエジプト脱出」は1792年に初演されましたが、同じくシカネーダーのために手掛けた歌劇「アルカディアの鏡」が1794年にヨーロッパ各地で成功を収め、彼の名を高めました。この成功を受けて、彼は1794年からケルンテン劇場（ケルントナートーア劇場）の副楽長兼専属作曲家に任命されます。さらに1792年には国民劇場の指揮者にも就任するなど、ウィーンの音楽界で重要な役割を担うようになりました。

1794年から1800年頃にかけて、ジュースマイヤーは作曲家として高い評価を得て、多忙を極めました。しかし、世紀が変わる頃から健康を損ない始め、結核のために音楽活動が次第に低調になっていきました。絶筆となった歌劇「狡猾さと偶然の一致」の上演に関する劇場支配人への詫び状は、彼の病状を物語っています。婚約も進んでいたとされますが、1803年9月17日に37歳という若さで急逝したため、全てが途絶えました。彼の墓は、モーツァルトと同じくウィーンのサンクト・マルクス墓地に、墓碑が建てられることなく埋葬されました。

彼の主要作品には、ミサ曲、レクイエム、オッフェルトリウムといった教会音楽、そして「アルカディアの鏡」「ソリマン二世」などの歌劇、「ベネヴェントのくるみの木」のようなバレエ音楽があります。彼の主題は他の作曲家にも影響を与え、例えばベートーヴェンは彼の主題によるピアノ変奏曲を、ニコロ・パガニーニは彼のバレエ音楽に基づく変奏曲を作曲しています。

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