フランツ・コンヴィチュニー

フランツ・コンヴィチュニー

フランツ・コンヴィチュニー（Franz Konwitschny, 1901年8月14日 - 1962年7月28日）は、20世紀に活躍したドイツの指揮者です。彼は、オーストリア＝ハンガリー帝国時代のモラヴィア、現在のチェコ領で生まれ、ドイツや東ドイツを中心に活動しました。著名なオペラ演出家であるペーター・コンヴィチュニーは息子です。

生涯

コンヴィチュニーは、音楽家の家系に生まれました。1920年から1923年までブルノの楽友協会音楽院でヴァイオリンを学び、1923年から1925年までライプツィヒ音楽院に在籍しました。この時期には、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でヴィオラ奏者として活動しました。

フルトヴェングラー、ブルーノ・ワルター、オットー・クレンペラーといった巨匠たちの影響を受け、コンヴィチュニーは指揮者になることを志しました。1927年にシュトゥットガルト歌劇場で練習指揮者としてキャリアをスタートさせ、3年後には首席指揮者に昇格しました。その後、ヴロツワフやフランクフルトなど、各地の歌劇場で要職を歴任しました。

戦後、1949年から亡くなるまで、ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者を務めました。1953年から1955年まではシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者も兼任し、1955年以降はベルリン国立歌劇場の首席指揮者も務めました。1952年には東ドイツ国家賞を受賞しています。

コンヴィチュニーは、ナチス・ドイツと東ドイツという二つの全体主義体制下で活動しましたが、政治的な影響を巧みに避けました。1961年4月には、ゲヴァントハウス管弦楽団を率いて初来日し、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏会を開催しました。この公演は、日本初のベートーヴェンチクルスとして知られています。二大都市だけでなく、地方都市でも公演を行い、多くの聴衆を魅了しました。

1962年7月28日、ユーゴスラビアのベオグラードでベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』のリハーサル中に心臓発作で亡くなりました。東ドイツ政府は、彼の功績を称え、国葬をもって弔いました。

音楽性

コンヴィチュニーは、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長として、長年にわたり楽団と活動を共にしました。戦争で傷ついた楽団の復興に尽力し、その演奏は明晰で緻密なものでした。フルトヴェングラーの影響を受け、正確なリズムに縛られない、楽曲の本質を表現するような指揮を行いました。

レパートリー

ベートーヴェン、シューマン、ブルックナーの交響曲、リヒャルト・シュトラウスやマックス・レーガーの管弦楽曲、ワーグナーのオペラなどを得意としました。ベートーヴェンの交響曲全集をはじめ、シューマン、レーガーの録音は、現在でも高く評価されています。また、パウル・デッサウ、オットマール・ゲルスター、ジークフリート・クルツなど、同時代の作曲家の作品も積極的に取り上げました。

エピソード

過度の飲酒癖から「コン・ウィスキー」という渾名を付けられていました。緊張しやすい性格で、コンサート前に酒を飲むことがあったと伝えられています。ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフとは、ヴィオラ奏者出身という共通点もあり、親交が深かったようです。

1961年4月には、レナード・バーンスタイン率いるニューヨーク・フィルハーモニックも来日しており、コンヴィチュニーの公演と日程が重なりました。コンヴィチュニーの人気が高かったため、バーンスタインの公演に空席が目立ったという逸話も残っています。

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