フリント (ミシガン州)

ミシガン州フリント市：栄光と衰退、そして現在

ミシガン州ジェネシー郡の郡庁所在地であるフリント市は、かつてゼネラルモーターズの企業城下町として繁栄を極めた都市です。デトロイトの北西約100キロメートルに位置し、2020年の人口は約8万1千人。しかし、GMの工場閉鎖を機に経済は急速に悪化し、深刻な社会問題を抱える「ラストベルト」の典型例となっています。

地理と歴史

フリント市は、フリント川流域の低地に広がり、フリント丘の北東に位置しています。市域は南東部が緩やかな丘陵地帯で、北西部は平坦な地形です。隣接するフリント・チャーター郡区とは独立した自治体です。総面積は約88.2平方キロメートルで、その約1.3％が水域です。

ゼネラルモーターズの創業地として発展したフリント市は、自動車産業の隆盛とともに人口が増加し、活気に満ちた都市でした。しかし、20世紀後半からのアメリカ製造業の衰退、そしてGMの工場閉鎖は、フリント市の経済に壊滅的な打撃を与えました。多くの工場が閉鎖され、失業率が急上昇。それに伴い、人口減少、治安悪化、社会基盤の崩壊といった深刻な問題が顕在化しました。

人口と社会問題

1998年には人口13万人を超えていましたが、2000年には12万4千人に減少。人口密度は1平方キロメートルあたり約1435人です。人種構成は、アフリカ系アメリカ人が53％以上を占め、白人が約41％となっています。

経済的格差も深刻で、貧困率は高く、多くの住民が貧困線以下の生活を送っています。世帯収入の中央値は3万ドル以下と低く、貧困層の増加は治安悪化の大きな要因となっています。FBIの統計によると、2011年の暴力犯罪発生率は全米でも最悪レベルに達しました。

水道水汚染問題

フリント市では2014年4月、財政問題からデトロイト水道下水局との契約を解消し、フリント川から水を供給するようになりました。しかし、フリント川の水質は悪く、老朽化した水道管の腐食が進み、水道水に鉛が溶け出すという深刻な問題が発生しました。

この鉛汚染問題によって、多くの市民、特に子供たちの健康被害が深刻化。血液中の鉛濃度の上昇や皮膚病の症状などが報告され、全国的な問題となりました。現在も、水道管の更新などの抜本的な対策は進んでいません。この問題については、行政に対する訴訟が複数提起され、人種差別問題に発展する可能性も指摘されています。

教育と文化

フリント市には、ミシガン大学フリント校（ミシガン大学のアナーバーキャンパスとは別に存在するサテライトキャンパス）や、ケタリング大学（元GMI）、モット・コミュニティ・カレッジなどの教育機関があります。

文化面では、映画監督のマイケル・ムーアや、多くのミュージシャン、アスリートなどを輩出しています。マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー』は、ゼネラルモーターズの破綻と、その影響を受けたフリント市の衰退を記録した作品として知られています。

交通と姉妹都市

フリント市は、ビショップ国際空港やバス路線などの公共交通機関によって支えられています。姉妹都市には、中国の長春市、カナダのハミルトン、ポーランドのキェルツェ、ロシアのトリヤッチなどがあります。

まとめ

フリント市は、かつての栄光と現在の苦境が対照的な都市です。経済の衰退、社会問題、環境問題など、多くの課題に直面していますが、市民や行政による努力によって、将来に向けた再生への取り組みが続けられています。しかし、抜本的な解決には、経済的支援や社会システムの改革など、長期的で多角的なアプローチが必要となるでしょう。現在も進行中の様々な問題を解決し、再び活気を取り戻すためには、継続的な努力と、社会全体の理解と協調が不可欠です。

もう一度検索