フルート協奏曲 (イベール)

ジャック・イベールのフルート協奏曲

ジャック・イベールによって1932年から1933年にかけて作曲された『フルート協奏曲』は、フルートと管弦楽のための作品です。この協奏曲は、イベールの代表作である交響組曲『寄港地』と並び、20世紀に書かれたフルート協奏曲の中でも特に有名な作品の一つとして知られています。モーツァルトのフルート協奏曲第1番や第2番と並び、このジャンルにおける傑作と評されています。

この作品は、初演者である名フルート奏者、マルセル・モイーズに献呈されました。

演奏時間は約18分。

初演

1934年2月25日、パリにてマルセル・モイーズの独奏、フィリップ・ゴーベール指揮のパリ音楽院管弦楽団によって初演されました。

編成

独奏フルートの他、以下の楽器で編成されています。
フルート2
オーボエ2
クラリネット
ファゴット2
ホルン2
トランペット1
ティンパニ
弦五部（第1ヴァイオリン6-8、第2ヴァイオリン6-8、ヴィオラ4-6、チェロ4-6、コントラバス2-4）

構成

この協奏曲は、以下の3つの楽章で構成されています。

第1楽章：Allegro

ヘ短調、ソナタ形式で書かれています。管弦楽による短い導入の後、独奏フルートがジグザグとした第1主題を奏で始めます。この主題は時折変拍子を伴い、独特のリズム感を生み出しています。対照的に、第2主題は穏やかな性格を持ちます。ティンパニの強奏によって展開部に入ると、独奏フルートは無窮動のような動きを見せ、音楽はクライマックスへと向かいます。その後、再現部に入り、独奏フルートが再び第1主題を奏でますが、最後は軽妙な雰囲気で終わります。

第2楽章：Andante

変ニ長調、三部形式で書かれた緩徐楽章です。弱音器を付けた弦楽器の伴奏に乗せて、独奏フルートが哀愁を帯びた旋律を奏でます。中間部ではやや盛り上がりを見せ、再現部では独奏フルートとヴァイオリンの二重奏が美しい響きを奏でます。

第3楽章：Allegro scherzando

ヘ長調、ロンド形式で書かれています。4拍子と3拍子が交錯する管弦楽の序奏の後、独奏フルートが三連符を多用したロンド主題Aを提示します。続いて、浮き上がるような主題Bが登場し、再びAに戻ります。序奏の要素によって一旦結句した後、音楽の表情は一変し、エキゾチックな雰囲気を持つ主題Cが弦楽器の伴奏で奏でられます。その後、主題Aに戻り、B、Aの順に進行した後、カデンツァ（独奏部分）に入ります。コーダは、序奏の要素を用いて明るく締めくくられます。

構成は、序奏 - A - B - A - C - A - B - A - カデンツァ - コーダ となります。

参考資料

* 『最新名曲解説全集10 協奏曲III』（矢代秋雄執筆）（音楽之友社）

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