フレイミング・ユース

フレイミング・ユース（Flaming Youth）

概要

フレイミング・ユースは、1960年代後半にイギリスで活動したロックバンドです。そのキャリアは短く、残念ながら商業的な成功を収めることはありませんでしたが、このグループは後の世界的ミュージシャン、フィル・コリンズがジェネシスに加入する前に最初にプロとして在籍したバンドとして、現在でも音楽ファンの間で記憶されています。

略歴

結成と初期活動

バンドの起源は、1969年に行われたザ・ウォーカー・ブラザーズのアメリカ人歌手ジョン・ウォーカーのイギリス・ツアーに遡ります。このツアーでバックを務めたミュージシャンの中に、キーボード奏者のブライアン・チャットン、ベーシストのゴードン・"フラッシュ"・スミス、ギタリストのロニー・キャリル、そしてドラマーのフィル・コリンズがいました。ツアー終了後、彼ら4人は意気投合し、共に音楽活動を継続することを決定します。当初は「ヒッコリー」という名前で活動を始め、この時期にシングル「Green Light/The Key」の録音を行いました。

フレイミング・ユースへの改名と『アーク II』

バンドの転機となったのは、ソングライターのケン・ハワードとアラン・ブレイクリーとの出会いでした。彼らは、自身が構想するコンセプト・アルバムを形にするためのバンドを探しており、そのパートナーとしてヒッコリーを選びます。この協力を機に、バンドは名称を「フレイミング・ユース」と改め、共同でアルバム制作に取り組みました。そして1969年、バンド唯一のアルバムとなるコンセプト・アルバム『アーク II（Ark 2）』がリリースされます。この作品は、壮大なテーマに基づいた楽曲群で構成されており、リリース当時には音楽専門誌『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』が、オランダで制作された1時間のテレビ特番がアルバムのコンセプトに沿った内容であると報じるなど、一定の注目を集めました。アルバムはイギリスのフォンタナ・レコードより発売され、評論家からは賛否両論の評価を受けましたが、残念ながら市場でのセールスは振るわず、商業的な成功には繋がりませんでした。アルバムからは、「Guide Me, Orion」や「Man, Woman And Child」といったシングルもカットされましたが、これらも大きなヒットには至りませんでした。

活動の終焉

商業的な不振に加え、バンドはライブ活動の機会を得るのにも苦労しました。思うように活動を展開できない状況が続き、バンドの士気は低下していきます。1970年初頭に解散を迎えるまでの短い期間、ブルース界の巨匠ジョン・メイオールの兄弟であるオルガン奏者ロッド・メイオールが一時的にバンドに加わったこともありましたが、状況を打開するには至らず、フレイミング・ユースは約1年の活動期間をもってその歴史に幕を閉じました。

解散後のメンバーの活動

バンド解散後、メンバーはそれぞれの道を歩み始めます。フィル・コリンズとロニー・キャリルは、イギリスの著名なプログレッシブ・ロック・バンド、ジェネシスへの加入を目指しオーディションに挑戦しました。ジェネシスの正規メンバーとなったのはコリンズのみでしたが、彼とキャリルは、ドラマーのオーディションが終了し、ギタリストのスティーヴ・ハケットが加入する直前の1970年8月に、アイルズベリーで行われたジェネシスのコンサートで一度だけ共に演奏しています。その後もキャリルは、コリンズがソロ活動を開始した際に、リズムギタリストとして彼のツアーバンドに参加するなど、音楽的な連携を続けました。

一方、キーボードのブライアン・チャットンは、プログレッシブ・ロック・バンド、ナイスのベーシスト兼シンガーであったリー・ジャクソンが新たに結成したグループ、ジャクソン・ハイツに参加。このバンドで3枚のアルバムをリリースし、キャリアを積みました。また、チャットンが自身のソロ・アルバム『Playing For Time』を制作した際には、旧友であるフィル・コリンズをドラムとしてフィーチャーしており、フレイミング・ユース時代の絆がその後の音楽活動にも影響を与えていることが伺えます。

メンバー

フレイミング・ユースの主なメンバーは以下の通りです。

ブライアン・チャットン (Brian Chatton) – オルガン、ピアノ、ボーカル
ゴードン・"フラッシュ"・スミス (Gordon "Flash" Smith) – ギター、12弦ギター、ベース、ボーカル
ロニー・キャリル (Ronnie Caryl) – ベース、ボーカル
フィル・コリンズ (Phil Collins) – ドラム、パーカッション、ボーカル
ロッド・メイオール (Rod Mayall) – オルガン (一時参加)

ディスコグラフィ

アルバム

『アーク II』 - Ark 2 (1969年)

シングル

"Guide Me, Orion" (1969年)
"Man, Woman And Child" (1970年)

結論

フレイミング・ユースは商業的には成功せず、短命に終わったバンドですが、その存在はフィル・コリンズという偉大なミュージシャンのキャリアの出発点として、またコンセプト・アルバム『アーク II』という当時のロックシーンの一端を示す作品を残したグループとして、音楽史の片隅に確かにその名を留めています。彼らの物語は、ビッグヒットに恵まれずとも、特定のアーティストの重要な通過点や、時代の一つの側面を記録する存在として、バンドが持つ多様な価値を示していると言えるでしょう。

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