フレデリックスバーグの戦い

フレデリックスバーグの戦い：南北戦争における一方的な悲劇

フレデリックスバーグの戦いは、1862年12月11日から15日にかけて、アメリカ・バージニア州フレデリックスバーグ市とその周辺で繰り広げられた、南北戦争における重要な戦闘の一つです。この戦いは、北軍のアンブローズ・バーンサイド少将率いるポトマック軍と、南軍のロバート・E・リー大将率いる北バージニア軍の間で戦われ、北軍にとって壊滅的な敗北となりました。

戦いの背景

この戦いは、北軍が南軍に対して主導権を握ろうとした試みから生まれました。9月に行われたアンティータムの戦いで南軍の侵攻を食い止めたものの、北軍のジョージ・マクレラン少将は、その後の追撃に失敗。エイブラハム・リンカーン大統領はマクレランの決断力の欠如を問題視し、彼を解任してバーンサイドを後任に任命しました。

リンカーン大統領とヘンリー・ハレック総司令官からの圧力もあり、バーンサイドは11月9日に攻撃計画を策定しました。その作戦は、陽動作戦で敵を欺きつつ、ラッパハノック川を越えてフレデリックスバーグを占領し、そこから南の首都リッチモンドへ進軍するというものでした。

しかし、作戦の実行段階で、舟橋の到着遅延やバーンサイドの優柔不断さが重なり、北軍は貴重な時間を失ってしまいます。その間に、南軍のリー将軍はフレデリックスバーグに軍を集結させ、強固な防御陣地を構築しました。

戦場への移動と陣地の構築

北軍は11月15日に行軍を開始し、17日にファルマスに到着しました。しかし、舟橋の手配ミスにより、ラッパハノック川を渡るための橋が到着しておらず、作戦は開始からつまずきました。エドウィン・V・サムナー少将は、即座に川を渡って町の南軍を蹴散らし、西側の高地を占領することを主張しましたが、バーンサイドは川の浅瀬が使えなくなることを恐れて、この提案を却下しました。

その間に、南軍のジェイムズ・ロングストリート中将の軍団がフレデリックスバーグに到着し、続いてジャクソン軍団も到着しました。リー将軍は当初、ノースアンナ川の背後に後退することを考えていましたが、北軍の動きが鈍いことを確認すると、フレデリックスバーグでの決戦を決意します。

11月25日には最初の舟橋が到着しましたが、すでに南軍はフレデリックスバーグ周辺に防御陣地を構築し終えていました。バーンサイドは、本来はフレデリックスバーグの南16kmで川を渡る予定でしたが、南軍のジュバル・アーリー准将の師団に阻止され、直接フレデリックスバーグを渡河することになりました。

12月11日、北軍は舟橋を建設し、渡河を開始しました。この際、南軍の狙撃兵からの激しい攻撃を受けましたが、上陸部隊を送り込み、狙撃兵を排除しました。市街戦も発生し、北軍の砲撃によって町は荒廃しました。

戦闘の開始と北軍の攻撃

戦闘は12月13日の午前8時半に開始しました。北軍は当初、左翼のフランクリン少将の部隊をジャクソン軍の右翼に送り込みました。ミード少将の師団が主攻撃隊となり、ペラム少佐率いる南軍の騎馬砲兵隊との激しい砲撃戦を展開しました。この攻撃でミード隊は一時的に南軍の陣地を突破しましたが、南軍の反撃により押し戻されました。

戦闘の焦点は、フレデリックスバーグ西側のメアリーズハイツに移りました。午前11時、北軍のフレンチ准将の師団が、プランク道路沿いに突撃を敢行しましたが、南軍の防御陣地の前に大きな損害を出して撃退されました。その後も、北軍はハンコック准将やハワード准将の師団を投入しましたが、いずれも南軍の堅固な防御を破ることができませんでした。

メアリーズハイツでの攻撃は、結果的に北軍の兵士が、南軍の強固な石壁の背後で待ち構える敵に次々と倒されていく、一方的な虐殺となりました。北軍は、6個師団を投入し、合計16回の個別攻撃を繰り返しましたが、全て失敗し、6,000名から8,000名の損失を出しました。

南軍のリー将軍はこの光景を見て、「戦争が恐ろしいのは良いことだ。そうでなければ、人々はそれを好きになってしまうだろう」と語ったと言われています。一方で、アイルランド旅団は、突撃により部隊の半数を失いながらも、高地に最も近い場所まで到達しました。

戦闘の終結とその後

12月14日、両軍は戦場に留まり、バーンサイドはメアリーズハイツへの最後の攻撃を検討しましたが、断念しました。同日午後、バーンサイドは負傷者の収容を求めて休戦を申し入れ、リーはこれを受け入れました。翌日、北軍は川を渡って撤退し、戦闘は終結しました。

この戦いでの北軍の損失は12,653名（戦死1,284名、負傷9,600名、捕虜または不明1,769名）に達し、南軍の損失は5,377名（戦死608名、負傷4,116名、捕虜または不明653名）でした。この戦いの結果は、北軍の戦術の拙劣さを露呈しました。

フレデリックスバーグの戦いは、北軍にとって悲惨な敗北となり、その責任を問われたバーンサイドは、その1ヶ月後に解任されました。南軍は大きな勝利を収めたものの、後に起こるゲティスバーグの戦いにおける大きな敗北へと繋がる序章となりました。

この戦いでは、第2サウスカロライナ志願歩兵連隊のカークランド軍曹が、戦場に横たわる北軍の負傷兵に水を与えるという人道的行為を行い、メアリーズハイツの天使として讃えられました。この出来事は、戦場における人間の善意を示す象徴的な出来事として語り継がれています。

戦場の保存

2006年、南北戦争保存信託は、フレデリックスバーグ戦場の重要な場所であるスローター・ペン農場の保存のために、募金運動を開始しました。この農園は、1862年12月13日の戦闘で、北軍が一時的に南軍の戦線を突破した場所であり、戦場の南端で最も保存されていない場所でした。この募金活動は成功し、農園は保存されました。

フレデリックスバーグの戦いは、南北戦争の中でも最も悲惨な戦いの一つとして、歴史に刻まれています。この戦いの教訓は、現代においても、戦争の悲惨さと無意味さを私たちに訴え続けています。

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