ジェイムズ・ロングストリート

ジェイムズ・ロングストリート：南軍の「老いたる軍馬」

ジェイムズ・ロングストリート（1821年1月8日 - 1904年1月2日）は、アメリカ南北戦争において南軍で重要な役割を果たした将軍です。ロバート・E・リー将軍の最も信頼する部下の一人であり、「オールド・ウォー・ホース（年老いた軍馬）」と愛称で呼ばれていました。彼の軍事的な才能は高く評価される一方で、ゲティスバーグの戦いにおける行動は、後世にわたって大きな議論を呼んでいます。

生い立ちと青年時代

ロングストリートはサウスカロライナ州で生まれ、ジョージア州で育ちました。父親はニュージャージー州出身、母親はメリーランド州出身で、綿花プランテーションを経営していました。幼少期から「ピーター」という愛称で呼ばれ、その後の人生では「ピート」や「オールド・ピート」の名で親しまれました。

軍隊での経験を積ませるため、9歳で叔父の元へ送られ、リッチモンド郡専門学校で教育を受けました。1837年、陸軍士官学校への入学を目指しましたが、枠がなかったため、翌年、母親のコネで入学を果たしました。ウエストポイントでは学業成績は良くありませんでしたが、同級生には後に南北戦争で活躍する多くの人物がいました。中でもユリシーズ・グラントとは親友となりました。

卒業後、ロングストリートは第4歩兵師団に配属され、ミズーリ州で任務に就きました。そこでグラントと再会し、後にグラントの妻となるジュリア・デントを紹介しました。その後、ロングストリートは連隊指揮官の娘、マリア・ルイーザ・ガーランドと結婚し、10人の子供をもうけました。

米墨戦争での活躍

ロングストリートは、米墨戦争では第8歩兵師団に所属し、数々の戦いで勇敢に戦いました。コントレラスやチュルブスコの戦いでの功績により名誉昇進を果たし、チャプルテペックの戦いでは負傷しながらも連隊旗をピケットに託し、その後の勝利に貢献しました。戦後、テキサス州での任務を経て、南北戦争を迎えることになります。

南北戦争での活躍

初期の戦い

南北戦争勃発後、ロングストリートはアメリカ陸軍を辞任し、南軍に加わりました。中佐として着任し、准将に昇進すると、バージニア州の3個連隊からなる旅団を指揮しました。第一次ブルランの戦いでは、北軍の攻撃を耐え抜き、その後の敗走を目の当たりにし、追撃を許さなかった南軍の指揮官に不満を抱きました。

その後、少将に昇進し、師団の指揮を執りました。1862年、猩紅熱により、3人の子供を失い、その喪失感から、社交的な生活を避け、敬虔な聖公会員となりました。

半島方面作戦では、ヨークタウンやウィリアムズバーグでの戦いで後衛を指揮し、北軍の進軍を遅らせました。七日間の戦いでは、リー将軍の指揮下で、15個旅団を率いて北軍を押し戻すなど、攻撃的な指揮を見せました。

第二次ブルランの戦い、メリーランド方面作戦、フレデリックスバーグの戦い

ロングストリートは防御的な戦術を好む将軍として知られていましたが、第二次ブルランの戦いでは、右翼の指揮官として、攻撃的な作戦にも貢献しました。8月30日には、北軍の左翼に総攻撃を仕掛け、4時間以上にわたって猛攻を加えました。この戦いは南軍の勝利に終わり、ロングストリートの軍事的な才能を証明しました。

メリーランド方面作戦では、アンティータムの戦いで防御陣を築き、優勢な北軍の攻撃を耐え抜きました。この功績により、中将に昇進し、リー将軍は彼を「私のオールド・ウォー・ホース」と称えました。

フレデリックスバーグの戦いでは、メアリーズハイツの石壁の背後に部隊を配置し、北軍の攻撃を14度も跳ね返しました。この戦いは、南軍の圧倒的な勝利となり、ロングストリートの防御戦術の有効性を示す結果となりました。

サフォーク、ゲティスバーグ

1863年初春、ロングストリートはリー将軍にテネシー軍への転属を提案しますが、これは実現しませんでした。サフォークの包囲戦では、北軍を包囲し、物資を確保することに成功しました。しかし、この作戦のためにチャンセラーズヴィルの戦いに参加できず、そのことが批判を招きました。

ゲティスバーグの戦いでは、ロングストリートの行動が大きな論争を呼びました。彼は、リー将軍に、敵の左翼に回り込み、北軍を防御戦に引き込ませるべきだと主張しましたが、リーは攻撃を主張しました。7月2日の攻撃は遅れ、成果を上げることができず、7月3日には、ピケットの突撃を指揮することになりました。ロングストリートは、この攻撃の成功の可能性がないと考え、命令に従いたくなかったと述べています。ピケットの突撃は、南軍にとって大きな損失となり、ゲティスバーグでの敗北の決定的な要因となりました。戦後、多くの人々が、ゲティスバーグでのロングストリートの行動を批判しました。

テネシー、荒野の戦い

1863年、ロングストリートはテネシー軍に転属し、チカマウガの戦いでは、左翼の指揮官として、南軍の勝利に貢献しました。しかし、その後、ブラッグ将軍と対立し、指揮権を制限されました。

ノックスビル方面作戦では、北軍に圧力をかけましたが、成功せず、1864年春には北バージニア軍に復帰しました。

1864年5月、荒野の戦いでは、北軍の側面を攻撃し、勝利に貢献しましたが、その際に部下の誤射によって負傷しました。この負傷により、その後の作戦に参加することができなくなりました。

アポマトックス

ロングストリートは1864年10月に復帰し、首都リッチモンドの守備隊を指揮しました。アポマトックスへの撤退では、リー将軍と共に戦い、降伏時にはグラントに公正な扱いを期待しました。

戦後

戦後、ロングストリートはニューオーリンズに転居し、綿の仲買事業などに携わりました。彼は、共和党員となり、グラントを支持したことで、南部の支持を失いました。ルイジアナ州の共和党員知事によって州兵の総務局長に任命されましたが、選挙の不正に関する暴動に巻き込まれました。その後、ゲインズビルに移住し、様々な職を経て、晩年は農場を経営しました。1897年に再婚し、妻と共にその遺産を守り続けました。

1896年に『マナサスからアポマトックスまで』という備忘録を出版し、戦時中の行動を弁明しました。1904年に肺炎で亡くなりました。

遺産

ロングストリートの軍事的な才能は高く評価される一方で、ゲティスバーグの戦いにおける行動が大きな論争を呼び、その評価は南北戦争終結後も長く議論されました。しかし、近年の研究により、彼の功績が見直されるようになり、再評価の動きが進んでいます。

ゲティスバーグ戦史公園には、20世紀末になってからようやく彼の銅像が建てられました。その像は、他の将軍の像とは異なり、地面に直に建てられていることが、彼の複雑な評価を象徴していると言えるでしょう。

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