フロリダパンサー

フロリダパンサー（フロリダピューマ）について

フロリダパンサー、またはフロリダピューマとして知られるこの動物は、食肉目ネコ科に属するピューマの亜種です。フロリダ州固有の亜種であり、絶滅の危機に瀕しています。現在、フロリダ半島の先端に位置するエバーグレーズ国立公園とビッグサイプレス国立保護区において、厳重な個体管理が行われています。

かつて、フロリダパンサーの個体数は1970年代には20頭前後にまで激減しましたが、2017年の調査では230頭まで回復しています。しかし、依然として絶滅の危機に瀕している状況は変わりません。

なお、フロリダパンサーという名前から、豹（パンサー）の一種と誤解されることがありますが、実際にはヒョウとは異なる動物です。また、同名の競走馬が存在しますが、この動物とは全く関係がありません。

フロリダパンサーの歴史

フロリダパンサーはかつて、テキサス州東部からフロリダ半島にかけて広範囲に分布していました。しかし、西部開拓時代以降、家畜を襲う害獣として駆除され、その数を大きく減らしました。19世紀後半には東部の州からほとんど姿を消し、20世紀初頭にはフロリダ半島を除き、その生息は確認されなくなりました。

1958年、フロリダパンサーは害獣リストから外され、法的な保護措置が講じられるようになりました。1967年には、連邦魚類野生生物局により絶滅危惧種に指定されました。

フロリダパンサーの生態

ピューマは北アメリカ最大のネコ科動物であり、通常は体長1-2メートル、体重100キログラムにもなります。しかし、フロリダパンサーは体長2メートル、体重55キログラム程度と、他のピューマに比べてかなり小型です。これは、他の地域から隔絶された環境で独自の進化を遂げた結果と考えられています。交雑が起こらず、長い年月をかけて独特の性質を持つようになりました。

個体管理の現状

1973年に再発見されたことを契機に、1981年にフロリダ野生生物委員会はフロリダパンサーの本格的な生態調査と行動管理を開始しました。発見された個体にはラジオテレメトリーが装着され、無線によって他のパンサーとの接触、獲物の種類、出産、死亡などの詳細な情報が調査されています。

また、毎年1月から3月にかけて捕獲調査が行われ、毛、皮膚、血液、精液、排泄物など、詳細な生物学的データが収集されています。これらのデータは、健康状態の把握や遺伝子レベルでの研究に活用されています。

フロリダパンサーが抱える問題

詳細な研究の結果、フロリダパンサーの生後6ヶ月以内の死亡率が50%を超えること、オスの精子の95%が奇形であること、また、カウリック（毛根異常）、キンクテイル（尾の奇形）、心臓や内臓の先天性疾患、貧血、ウイルスや細菌による感染症、潜在睾丸など、様々な異常がほぼすべての個体から検出されることが明らかになりました。

これらの異常の原因は、近親交配であると考えられています。開発による生息地の分断により、フロリダパンサーは交流の無い少数のグループに分断され、近親交配を繰り返すことで、遺伝的な多様性が失われてしまったと考えられています。

フロリダパンサーが正常な生態を維持するためには、約780平方キロメートルの広大な面積が必要とされます。しかし、1960年代以降のフロリダ半島の開発により、広大な湿地が農業用地へと変わり、フロリダパンサーの生息地が失われました。

特に、1967年に開通したマイアミからネイプルズを結ぶ高速道路（アリゲーター・アレイ）は、フロリダパンサーの最大の生息地を分断する結果となりました。これにより、個体間の交流が途絶え、近親交配が加速したと考えられています。

参考文献

* 『絶滅動物の予言』情報センター出版局 ISBN 4-79-581262-4

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