フーガ風序曲

フーガ風序曲 H.151 作品40-1

『フーガ風序曲』作品40-1（H.151）は、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストによって1922年に書かれた演奏会用序曲である。およそ5分という短い演奏時間ながら、最初期に位置づけられる新古典主義音楽の試みの一つとしても注目される。本作は、発表当初はその評価が分かれたものの、今日ではホルストの後期様式を予感させる、簡潔ながらも魅力と刺激に富んだ作品として認識されている。

作曲と初期演奏史

作曲は1922年の夏に開始され、ホルストが教鞭をとっていたセント・ポール女学校の防音室が主な作曲の場となった。初期の段階ではバレエ音楽として構想されていたが、最終的には演奏会用序曲として形をなし、総譜は1923年1月4日に完成を迎えた。

作品の初演は、1923年5月14日にコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスで行われた。これは、同日に初演されたホルストのオペラ『どこまでも馬鹿な男』への導入として演奏されたもので、ウジェーヌ・グーセンスがブリティッシュ・ナショナル・オペラ・カンパニー管弦楽団を指揮した。演奏会形式での初演は同年10月11日、ヘンリー・ウッドによるプロムナード・コンサートにて実現し、この時は作曲者自身がニュー・クイーンズ・ホール管弦楽団を指揮している。その後も本作は、1949年や1985年など、同シリーズで度々取り上げられている。また、BBCでは1924年の初頭に初めて放送され、1927年にはプラハで行われたヴァーツラフ・ターリヒ指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団による演奏も放送された。

録音史

ホルスト自身はコロンビア・グラモフォン・カンパニーと本作の録音を計画していたが、残念ながらこれは実現に至らなかった。本作初の商業録音は、1967年にエイドリアン・ボールト指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われ、翌年にリリタ・レーベルから発売された。

楽器編成

本作の楽器編成は、以下の通りである。

ピッコロ、フルート2、オーボート2、コーラングレ、クラリネット2（B♭）、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
ホルン4（F）、トランペット3（C）、トロンボーン3、チューバ
ティンパニ、打楽器1または2
弦五部

これに加え、小編成版（ピッコロ、フルート、オーボエ、コーラングレ、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン2、弦五部）や、2台ピアノへの編曲版も存在する。

楽曲構成

ホルスト自身が「フーガ風」であると同時に「ソナタ」であると語ったように、本作はその形式において型破りな構造を持つ。J.S.バッハの対位法的手法から霊感を得て書かれており、イーゴリ・ストラヴィンスキーの新古典主義作品群と比較されることもあるが、本作の方が若干先行しているため、直接的な影響は受けていない。

楽曲は大きく3つの部分に分けられる。冒頭の第1部は、急速な4/4拍子で、8つの八分音符が3+3+2という特徴的なクロスリズムを伴う力強いフーガ風の主題が提示される。続く第2部では速度を大幅に落とし、チェロ独奏によって後の交響詩『エグドン・ヒース』を思わせるような、内省的で広大な音響空間が創出される。終結部である第3部では、再び速度を上げ、第1部で現れたフーガ風主題が再現され、曲を締めくくる。

評価

本作は1920年代から1930年代にかけて、評論家の間で賛否両論を巻き起こした。『ミュージカル・タイムズ』誌は「見事な面白さ」を見出し、『タイムズ』紙は「活気あるリズムと鮮やかな色彩」を称賛する一方で、別の機会には『フーガ風協奏曲』と比較して劣るとし、「アイデアが少なく」「以前のホルストならもっと巧みに表現しただろう」と批判された。R・W・S・メンドルは「終始楽しみで愉快にさせてくれる作品」と好意的に評したが、ダイネリー・ハッセイは本作と『フーガ風協奏曲』を共に「対位法形式によるひねくれた練習曲であり、いかなる温かみも本当の活気も有していない」と不満を表明した。

時を経て、ホルストの娘イモージェンは、本作を「不満足」な作品とし、中間部だけが耳障りなフーガの「騒音」からの一時的な「解放」であると述べた。また、ホルストの盟友レイフ・ヴォーン・ウィリアムズも、ホルストの作品について語る中で、本作は自身が「好む作品ではない」と率直に認めている。

しかし、多くの称賛も寄せられている。1956年のボールトによる演奏を評した『タイムズ』紙は、その演奏に説得力を見出し、楽曲自体を「いかなる交響楽の演奏会でも効果的に開始できるような爽快な作品」と評した。ウィリアム・マンは1967年に本作を「気分を高揚させる」と述べている。1974年には、ヒュー・オッタウェイが『ミュージカル・タイムズ』誌上で、本作は主要作品ではないものの活気に満ちており、「使い古された『開始楽曲』の代わりに、折に触れて演奏される価値が十分にある」と評価した。さらに時代が下ると、「清々しい元気が満ちている」「スリル満点の小品」「1920年代の『ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン』のように思われる」といった肯定的な批評が見られるようになっている。これらの評価は、短時間の中に凝縮された本作のエネルギーと革新性が、時代を超えて再評価されていることを示唆している。

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