フードル級揚陸艦

フランス海軍フードル級揚陸艦：多様な任務に対応する輸送揚陸艦

フランス海軍のフードル級揚陸艦は、同国が独自に開発した輸送揚陸艦です。ウラガン級の後継として建造され、高い輸送能力と多様な運用能力を備えています。本稿では、その設計、能力、運用実績について詳しく解説します。

開発と建造

フードル級は、1980年代後半から計画が始まりました。当初は3隻の建造が予定されていましたが、予算制約のため2隻の建造となりました。1番艦「フードル」は1998年に就役し、2番艦「シロッコ」は2000年に就役しました。その後、両艦はそれぞれチリ海軍とブラジル海軍に売却され、フランス海軍での運用は終了しています。

設計と性能

フードル級は、前級であるウラガン級を参考に設計されましたが、主機関や推進システム、船体構造に改良が加えられています。特に、主機関はデュランス級補給艦のものと共通化することで、維持管理の簡素化とコスト削減を実現しています。また、航行速度もウラガン級より向上しており、迅速な展開能力を有しています。さらに、上陸用舟艇の効率的な発着を支援するために、バウスラスターが搭載されています。

輸送能力

フードル級は、1個機械化歩兵連隊とその装備、車両、物資などを輸送する能力を備えています。大型車両甲板は、RO-RO方式による車両の輸送にも対応しており、効率的な貨物輸送を可能にしています。ウェルドックは、上陸用舟艇や小型艦艇の収容・輸送に使用できます。最大でCDIC型汎用揚陸艇2隻、CTM型機動揚陸艇10隻、あるいは哨戒艇1隻を収容可能です。ウェルドックの水位調整には大容量のバラストタンクが使用されます。

搭載できる車両の例としては、AMX-30戦車、AMX-10RC偵察戦闘車、AMX-10P歩兵戦闘車、ジープ、トラックなどが挙げられ、「シロッコ」はルクレール戦車の搭載にも対応していました。搭載できる物資量は1,880トンに上ります。

病院船機能

フードル級は、病院船としての機能も有しています。手術室2室と47床の病床を備えた医療区画を有し、災害時や紛争時の医療支援に活用できます。この医療区画は、ヘリコプター甲板直下に配置されているため、傷病者の迅速な搬送を可能にしています。

航空運用能力

フードル級は、ヘリコプター4機を収容できるハンガーと、2つのヘリコプター発着スポットを備えています。また、移設式のプラットフォームを用いることで、追加の発着スポットを確保できます。ヘリコプターへの燃料供給のため、184キロリットルのJP-5ジェット燃料を搭載可能です。

運用実績

フードル級は、フランス海軍の多様な作戦行動に貢献しました。2002年には、コートジボワール内戦において、フランス国民をはじめとする外国人の避難・救出活動に投入されました。

まとめ

フードル級揚陸艦は、高い輸送能力と多様な運用能力を兼ね備えた、優れた艦艇です。その能力は、平和維持活動や人道支援活動から、戦闘行動まで幅広く活用できます。フランス海軍の戦力としての貢献は高く評価され、退役後も他国海軍でその能力を発揮しています。

もう一度検索