フード・ユニット

フード・ユニット：北米ディーゼル機関車の標準スタイル

フード・ユニットとは、機関車の主要機器を台枠よりも狭いフードで覆った構造のディーゼル機関車のことを指します。日本語では、このフード部分をボンネットと呼ぶこともあります。本稿では、主に北米におけるフード・ユニットについて解説します。

形態と目的

フード・ユニットは、運転室（キャブ）を1カ所持ち、その配置は大きく3つのパターンに分けられます。運転室は機関車の全幅とほぼ同じですが、フード部は前方視界を確保するため台枠より狭く設計され、両側には点検用のランニングボードが設置されています。

車体の強度と剛性は台枠によって支えられ、フードは機器保護の役割を担います。整備性を考慮し、フードには多数の点検扉が設けられ、容易に脱着できる設計となっています。フードを台枠幅いっぱいに拡張したものは、カウル・ユニットと呼ばれます。

歴史

フード・ユニットは、スイッチャーと呼ばれる小型機関車の構造を発展させたものです。スイッチャーは低く長いフードを持ち、優れた視界を確保していました。1941年、アメリカン・ロコモティブ社は、スイッチャーを大型化したRS-1を開発し、「ロード・スイッチャー」というコンセプトを打ち出しました。これは運転室を車体中央付近に配置し、一端には長いフード、他端には短いフードを設けた構造です。運転室が車端部になく、衝突時の乗務員の安全性を高める設計でした。

1949年には、GM-EMD社がGP7を発表します。RS-1と同様のレイアウトですが、大型ディーゼルエンジン、発電機、ラジエーター、排気系などを収納するため、前後のフードの高さを運転室と同じ高さにしました。この「背高フード」は、その後フード・ユニットの標準となりました。短い方のフードも運転室と同じ高さで、「ハイ・ノーズ」または「ハイ・ショート・フード」と呼ばれました。当初、この高いフードは、労働組合との交渉の結果、機関士を左右両側に配置（2名乗務）するための措置でした。これは、視界を狭めることで安全確認の徹底を図るという、一見矛盾する「反合理化」でした。その後、労使関係が改善されると短いフードの高さは低くなり（「ロー・ノーズ」または「ロー・ショート・フード」）、視界が向上しました。ハイ・ノーズをロー・ノーズに改造した車両も存在します。さらに、ロー・ノーズ側は全幅に拡大され、後のカナディアン・セーフティ・キャブへと発展していきます。

優れた視界とキャブへのアクセス性から、フード・ユニットは北米だけでなく世界中で広く普及しました。

運転

スイッチャーの中には、2基のエンジンを搭載し、車体中央に運転室を配置し、前後にエンジンを配置するタイプがありましたが、ロード・スイッチャーでは、2基分のエンジン室を一体化し、運転室を車体の一端に配置するようになりました。短いフード側を先頭にする運転方法が好まれました。しかし、長いフード側を先頭にしても十分な視界が確保できるため、どちらの方向でも同じ速度で走行が可能です。

衝突安全性向上のため、長いフード側を前とする機関車をオーダーした鉄道会社（ノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道やサザン鉄道など）もありましたが、これは少数派でした。多くの機関車は運転台を前後両側に備えており、進行方向の変更に際して機関車の転向作業が不要でした。先頭側に当たる側面には「F」の文字が記されています。

補助機関車：Bユニット

キャブのない補助機関車も製造されており、キャブ・ユニットにならって「Bユニット」と呼ばれています。キャブはありませんが、エンジンと発電機を搭載しているため、主電動機と死重しか搭載していないスラッグとは異なり、車体全体を高いフードが覆っているのが特徴です。

代表的なフード・ユニット

アメリカ合衆国

貨物用機関車

GE U30C
GE U36B
EMD GP60
EMD SD60
EMD SD70

旅客用機関車

EMD SDP45
GE Dash 8-32BHW

イギリス

イギリスでは「フード・ユニット」という名称は用いられていませんが、同様の構造の機関車がいくつか存在します。

09形
15形
16形
20形
10800号

日本

日本では、スイッチャー（または除雪兼用）で、輸入機かアメリカとの技術提携によるものがほとんどです。

エンドキャブ形

DC10形（クルップ（ドイツ）製）
DC11形（MAN（ドイツ）+ブラウン・ボベリ（スイス）製）
DD41形（クーパベッセマ+GE（共にアメリカ）と東芝との技術提携）
DD14形（国産、除雪兼用）
太平洋石炭販売輸送DE600形（GEのU10Bを日本車両でノックダウン生産）

センターキャブ形

DD12形（GE+CAT（共にアメリカ）製）

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