ブギー・ロック

ブギー・ロックとは

ブギー・ロックは、1960年代後半にブルースロックから発展した音楽スタイルの一つです。その最大の特徴は、グルーヴを強調する反復的で推進力のあるリズムにあります。このリズムは、聴く人を自然と体を揺らすような、独特の高揚感を生み出します。

ブギー・ロックは、1920年代から1940年代にかけて人気を博したピアノ主体のブギウギとは異なります。ブギウギは、初期のロックンロールやロカビリーの楽曲にも多く取り入れられましたが、ブギー・ロックはよりギターサウンドを重視したスタイルへと進化しました。

ブギー・ロックのルーツ

ブギー・ロックの起源を語る上で欠かせないのが、1948年にアメリカのブルース・アーティスト、ジョン・リー・フッカーが録音した「Boogie Chillen'」です。この曲は、ミシシッピ北部のヒル・カントリー・ブルースから派生したアーバン・エレクトリック・ブルースの初期の作品とされています。音楽学者のロバート・パーマーは、フッカーの演奏について、「彼はピアノのブギをコピーしていたのではなく、ビートよりもわずかに前にアクセントを置いた、1コードのオスティナートを演奏していた」と述べています。これは、従来のブギウギとは異なる、新しいリズムアプローチであったと言えるでしょう。

一方で、アーサー・“ギター・ブギ”・スミスの1945年のインストゥルメンタル曲「Guitar Boogie」（後に「Hillbilly boogie」と呼ばれる）は、より伝統的なブギウギのスタイルに根ざしたものでした。このことから、ブギー・ロックは、伝統的なブギウギの要素を受け継ぎながらも、独自の進化を遂げた音楽スタイルであると理解できます。

ブギー・ロックの広がり

フッカーのギターによる反復的なリフは、アメリカのロックバンド、キャンド・ヒートの「Fried Hockey Boogie」に取り入れられました。1968年にアルバム『ブギー・ウィズ・キャンド・ヒート』に収録されたこの曲は、ブギー・ロックのスタイルを広く知らしめるきっかけとなりました。その後、多くのアーティストがブギー・ロックのスタイルを取り入れ、人気を博しました。

ノーマン・グリーンバウムの「スピリット・イン・ザ・スカイ」（1969年）や、ZZトップの「ラ・グランジェ」（1973年）は、ブギー・ロックの代表的な楽曲として知られています。これらの楽曲は、シンプルなコード進行と反復的なリフを基調としながらも、パワフルなギターサウンドとグルーヴ感あふれるリズムが特徴です。これらの楽曲は、ブギー・ロックが単なる一時的な流行ではなく、音楽シーンに確固たる地位を築いたことを示しています。

ブギー・ロックは、その後も多くのアーティストに影響を与え続け、ロックンロールの重要な要素の一つとして、今もなおその魅力が失われることなく、多くの人々に愛されています。

マルコム・ヤングは、AC/DC|AC_DCへの影響について、次のように説明しています。

"[AC/DC|AC_DCの音楽は]ブギです。バンドが演奏するリズムのスタイルは、ブギ、ブギ、ブギです。"

この発言からも、ブギー・ロックがロックミュージックに与えた影響の大きさを感じることができます。

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