ブナ沢乗越

ブナ沢乗越の紹介

ブナ沢乗越（ブナさわのっこし）は、丹沢山地の西部に位置する峠で、神奈川県足柄上郡山北町と山梨県南都留郡道志村の間にあります。標高は約1,180メートルで、もともとこの地域は自然豊かな環境で知られています。周囲はブナの木々に囲まれ、冬以外はあまり展望が望めませんが、その静かな魅力が多くの登山者を引き寄せています。

自然環境と周辺地域

この峠は、道志の森キャンプ場から菰釣山へと至る三ヶ瀬川西沢の登山道と、甲相国境尾根が交わる場所として知られています。南側は県立丹沢大山自然公園に含まれ、北側は横浜市水道局が指定する水源涵養林が広がっています。こうした自然環境が保護されている一方、冬枯れの時期以外では景観を楽しむことが難しいため、静寂を求める登山者にはうってつけのスポットです。

名称の由来

峠のあたりでは、富士山の火山活動から生じた黒色火山灰が登山道に露出しています。山梨県側の土壌は火山性のために貧弱で、これに対して神奈川県側は美しい樹林が形成されています。江戸時代には、この地域が幕府の御用林となっており、無断伐採が厳しく禁じられていました。そのため、山梨側から神奈川側へ木材を盗みに行く者が存在し、このことが「盗賊ブッコシ」や「盗伐越場」といった名称の由来となっています。

現在、一般に用いられている地図では「ブナ沢乗越」として知られています。これは、ブナ沢という支流がこの峠に流れ込んでいることから名付けられたものです。また、約500メートル北東には「ブナ沢ノ頭」という山も存在し、こちらもブナ沢の上流の山という意味を持っています。

登山道の概要

ブナ沢乗越自体は小さな峠であり、ここを目的に登る登山者は少ないですが、主に周辺の名山を訪れる登山ルートの通過点として利用されています。最も一般的なルートは、道志の森キャンプ場から三ヶ瀬川西沢を登り、ブナ沢乗越を経て菰釣山に至る経路です。特にこのルートは、菰釣山へのアプローチとして多く利用されています。また、近年は台風や豪雨による崩壊があるため、登山の際は最新の情報をチェックすることが重要です。

さらに、甲相国境尾根を縦走する登山ルートも存在し、西丹沢自然教室を起点として、畦ヶ丸や大界木山を経由してブナ沢乗越や菰釣山に至り、最終的には山中湖東岸の平野地区に至る長大なコースも整備されています。このルートは、相模国と甲斐国の境を意識しながら自然を堪能でき、人気があります。

周辺の山小屋

ブナ沢乗越の近隣には、菰釣避難小屋という無人の避難小屋があります。この小屋は非常時に利用されるためのもので、意図的な宿泊は控えるよう呼びかけられています。丹沢山地は他にも多くの山小屋が点在していますが、無人の施設が多く、自然との距離を感じさせる場所でもあります。

このように、ブナ沢乗越は自然と歴史が息づく場所として、多くの登山者に親しまれています。一度訪れてみることで、丹沢山地の魅力を新たに発見できることでしょう。

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