ブラックヒルズ戦争

ブラックヒルズ戦争：金鉱を巡る民族浄化の歴史

ブラックヒルズ戦争は、1876年から1877年にかけて、アメリカ合衆国がスー族の領土であるブラックヒルズの金鉱を奪うために、先住民に対して行った侵略戦争です。この戦争は、リトルビッグホーンの戦いでカスター中佐率いる第7騎兵隊が全滅したことで特に知られています。

背景

19世紀初頭、アメリカ合衆国の植民地はミズーリ川を越えて西へと拡大し、その過程で先住民インディアンとの衝突が不可避となりました。アメリカ政府は、インディアンを保留地に強制移住させ、その領土を割譲させるという政策を推し進めました。1851年のララミー砦条約では、9部族から1万人を集め、インディアンの保留地を設定しました。しかし、この政策はインディアンたちの激しい反発を招きました。中でも、スー族は最大の抵抗勢力でした。

1868年のララミー砦条約で、アメリカ合衆国はブラックヒルズを含む地域を「白人の侵犯の許されない、スー族の不可侵の領土」と約束しました。しかし、この条約は、ブラックヒルズに金が発見されたことで、あっさりと破られてしまいます。1874年、アメリカ政府はカスター遠征隊を派遣してブラックヒルズを調査し、その結果、金脈の発見が公表されました。この報せは瞬く間に全米に広まり、多くの白人たちが金鉱を求めてブラックヒルズに殺到しました。

白人の誤解

アメリカ合衆国の白人たちは、インディアンの社会や文化を根本的に誤解していました。白人たちは、インディアンの「酋長」を「部族を率いる指導者」だと考えていましたが、実際には、インディアン社会には絶対的な権力を持つ指導者は存在しません。「酋長」は調停者であり、インディアンの戦士は個人の判断で行動していました。白人たちは、インディアンとの条約交渉において、この誤解に基づいた対応を行い、交渉はしばしば決裂しました。

合衆国の最後通告と軍事作戦

アメリカ政府は、外交交渉によるブラックヒルズの獲得を諦め、軍事力による制圧へと方針を転換しました。1875年12月、インディアン問題委員会は、指定保留地外にいるスー族に対して、1月末までに保留地に戻らなければ敵とみなすと最後通告しました。しかし、この通告に従うインディアンはいませんでした。

1876年2月、アメリカ軍はスー族に対する軍事作戦を開始しました。3月にはレイノルズ大佐の部隊がスー族の集落を攻撃し、これがブラックヒルズ戦争の始まりとなりました。その後、アメリカ軍は三方向からスー族を包囲する作戦を展開しました。

6月17日にはクルック将軍の部隊が「ローズバッドの戦い」でスー族と交戦し、6月25日にはカスター中佐率いる第7騎兵隊が「リトルビッグホーンの戦い」で全滅しました。この戦いは、アメリカ軍にとって大きな衝撃であり、国民の怒りを招きました。

その後、アメリカ軍は態勢を立て直し、スー族に対する攻撃を続けました。9月にはスリムビュットの戦いでインディアンを虐殺し、11月にはダルナイフの戦いでシャイアン族を襲撃しました。

和平交渉とクレイジー・ホースの死

アメリカ軍が軍事作戦を進める一方で、アメリカ政府は和平交渉も行いました。ジョージ・ソード、スポッテッド・テイル、ジョニー・ブルーギア、レッドクラウドらが和平交渉団として派遣され、多くのインディアンが降伏しました。

1877年5月にはクレイジー・ホースも降伏しましたが、同年9月、アメリカ軍によって殺害されました。また、シッティング・ブルは仲間と共にカナダに逃れ、その後、帰還することはありませんでした。

結果と影響

ブラックヒルズ戦争の結果、アメリカ合衆国はブラックヒルズを手に入れ、スー族は保留地に押し込められました。スー族の不可侵の領土は引き裂かれ、その伝統的な生活様式は破壊されました。この戦争は、アメリカ合衆国によるインディアンへの侵略と民族浄化の歴史における重要な出来事の一つとして、深く記憶されることとなりました。

ブラックヒルズ戦争は、白人による先住民文化の誤解、条約の破棄、そして軍事力による侵略という、悲劇的な歴史の一例であり、今日においてもその教訓を忘れることはできません。

参考文献

Brown, Dee. BURY MY HEART AT WOUNDED KNEE (New York: Holt, Rinehart, Winston, 1970)
Capps, benjamin. The Indians(Timelife,1976)
Mcmurtry, Larry. Crazy Horse(Penguin Life,1999)

関連項目

インディアン戦争
大量虐殺
白人至上主義
植民地主義
ユリシーズ・グラント
ウィリアム・シャーマン
ゴールド・ラッシュ
ブラックヒルズ
領土問題
同化政策
ホロコースト
西部劇
民族浄化

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