ブラッド・ギルバート

ブラッド・ギルバート：勝利への戦略と指導の哲学

ブラッド・ギルバート（Brad Gilbert）は、1961年8月9日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州オークランド出身の元男子プロテニス選手であり、卓越したコーチとしても知られています。1980年代後半から1990年代前半にかけて、アメリカを代表する選手の一人として活躍し、ATPツアーでシングルス20勝、ダブルス3勝を記録。自己最高ランキングはシングルス4位、ダブルス18位です。彼の選手としての実績もさることながら、アンドレ・アガシをはじめとする著名なトッププロ選手たちのコーチとしての手腕は、テニス界に大きな影響を与えました。

選手としてのキャリア

1982年にプロ入りを果たしたギルバートは、同年11月に台湾・台北市の大会でツアー初優勝を飾ります。1983年の全仏オープンで4大大会デビューを果たし、続くウィンブルドンではジョン・マッケンローとの3回戦に進出。1984年には年間2勝、1985年には3勝を挙げるなど、着実にキャリアを積み重ねていきました。1985年10月には、イスラエル・テルアビブ大会でシングルスとダブルスの両方で優勝。シングルス決勝では地元のアモス・マンスドルフを破り、ダブルスでは往年の名選手イリ・ナスターゼとペアを組んで優勝しました。

1986年には年間4勝を挙げ、デビスカップのアメリカ代表にも初選出。1987年の全米オープンでは初のベスト8に進出します。4回戦でボリス・ベッカーを破ったものの、準々決勝でジミー・コナーズに敗れました。

1988年には足首の故障で一時戦線を離脱しましたが、同年のソウルオリンピックでは、プロテニス選手の参加が認められた初のオリンピックで銅メダルを獲得。準決勝でティム・メイヨットに敗れたものの、銅メダル決定戦がなかったため、ステファン・エドベリと共に銅メダリストとなりました。

1989年はギルバートにとって最も好調なシーズンとなり、8大会で決勝に進出し、うち5大会で優勝。全米オープン前哨戦では3週連続優勝を飾りました。1990年1月1日には、世界ランキングで自己最高の4位をマーク。同年のウィンブルドンでもベスト8に進出しましたが、準々決勝でボリス・ベッカーに敗れました。4大大会では2度のベスト8進出に終わり、準決勝以上には進めませんでした。

1990年以降は優勝から遠ざかり、1991年以後は7度の準優勝に終わりました。デビスカップでは1993年までアメリカ代表を務めましたが、シングルス戦のみの出場でした。

ギルバートは1982年のプロ入り以来、ジャパン・オープンやセイコー・スーパー・テニスで毎年のように日本を訪れており、日本のテニスファンにも馴染み深い選手でした。セイコー・スーパー・テニスでは1983年にイワン・レンドルとの準決勝に進出し、ジャパン・オープンでは1993年にピート・サンプラスに敗れて準優勝しています。

コーチとしての成功

1994年からアンドレ・アガシのコーチに就任し、アガシの全米オープン初優勝、そして世界ランキング1位獲得に大きく貢献しました。1995年にアガシのコーチに専念するため、現役を引退。その後もアガシを支え続けました。2002年以降は、アンディ・ロディックやアンディ・マリーのコーチも務め、2011年からは錦織圭のコーチとして15トーナメントに同行しました。

著書と影響

ギルバートは2冊の著書を出版しており、1994年に出版した『Winning Ugly: Mental Warfare in Tennis』（格好悪く勝つ－テニスにおける精神的な戦い）はベストセラーとなりました。2005年には2冊目の著書『I've Got Your Back』を出版しています。

ブラッド・ギルバートは、選手として、そしてコーチとして、テニス界に多大な貢献をしてきました。彼の勝利への戦略と、選手を育成する手腕は、多くの人々に影響を与え続けています。

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