ブラフマーストラ (映画)

ブラフマーストラ (Brahmāstra: Part One – Shiva)

作品概要

『ブラフマーストラ』（原題：Brahmāstra: Part One – Shiva）は、2022年に公開されたインドのヒンディー語ファンタジーアクションアドベンチャー映画です。アヤーン・ムカルジーが監督と脚本を手がけ、ランビール・カプール、アーリヤー・バット、アミターブ・バッチャンといった豪華キャストが出演しています。本作はインド神話に深く根差した独自のシネマティック・ユニバース「アストラバース」の記念すべき第一作目として位置づけられています。

物語

太古のインド、賢者たちは強大な力「ブラフム・シャクティ」を授かり、様々な神秘の武器「アストラ」を生み出しました。中でも宇宙を滅ぼすほどの最強の力を持つのが「ブラフマーストラ」です。賢者たちはこの力を封印し、アストラを守り世界の均衡を保つため秘密組織「ブラフマーンシュ」を結成しました。

物語は現代のムンバイへ移り、ごく普通のDJとして暮らす青年シヴァが、偶然出会った女性イーシャに心を奪われることから始まります。しかし、シヴァは自身の中に特別な力、火を操る「アグニヤストラ」の能力が宿っていることに気づき始めます。時を同じくして、かつてブラフマーストラを解き放とうとして封印されたデーヴとその配下であるジュヌーンが再び活動を開始。彼らはブラフマーストラの封印を解くために必要な三つの欠片を狙います。

シヴァはブラフマーンシュのメンバーであるモーハン博士やアニーシュ教授といった守護者たちがジュヌーンに襲われるヴィジョンを繰り返し見るようになります。自身の能力とヴィジョンに導かれ、イーシャと共に旅に出たシヴァは、ブラフマーンシュの導師グルと出会い、彼が孤児として育った背景に隠された両親、デーヴとアムリタの驚くべき秘密を知ることになります。シヴァはブラフマーンシュの仲間たちと共にアストラの使い方を学び、ジュヌーンの追跡をかわしながら、ブラフマーストラの欠片を守るための壮絶な戦いに巻き込まれていきます。

製作背景

本作の構想は2011年に監督のアヤーン・ムカルジーによって練り始められ、2014年には製作が本格的にスタートしました。企画当初は「Dragon」という仮称でしたが、2017年に正式に『ブラフマーストラ』と命名され、三部作構成となることが発表されました。主演のランビール・カプールは、このオリジナルストーリーの製作に監督が6年を費やしたこと、シリーズ全体では10年以上かかる壮大なプロジェクトであることを語っています。

撮影は2018年から2022年まで、ブルガリア、ロンドン、ニューヨーク、エディンバラ、タイ、インド各地（マナリ、ムンバイ、ヴァーラーナシー）といった多岐にわたるロケーションで行われました。COVID-19パンデミックの影響で撮影が中断されるなど、長期間にわたる困難なプロセスを経て完成しました。製作費は報道によれば41億ルピーと、インド映画史上でも有数の規模となりました。

ポストプロダクションでは、最先端のVFX技術が駆使され、その費用は15億ルピーに上ると報じられています。これらの技術は国内外の複数のスタジオが協力して実現しました。音楽はプリータムが担当し、物語を彩る重要な要素となっています。

公開と反響

度重なる公開延期を経て、2022年9月9日に世界中の劇場で公開されました。インド国内では5000スクリーン、海外市場では3000スクリーンという、当時のインド映画としては過去最多の上映規模を記録しました。スター・スタジオ、20世紀スタジオ、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズといった大手スタジオが配給を担い、特に南インドの主要言語吹替版は著名なS・S・ラージャマウリ監督がプレゼンターを務めるなど、大規模なマーケティングが行われました。

公開前には、一部で海賊版サイト対策や、キャストの発言を巡るボイコット運動、寺院訪問時の騒動といったトラブルも発生しました。

興行収入は全世界合計で43億1000万ルピーを記録し、商業的には成功を収めました。特にインド国内では2022年のヒンディー語映画で第1位となるなど、パンデミック後の市場を活性化させる一作となりました。

批評家からの評価は賛否両論に分かれました。多くのレビューで、その目を見張るような視覚効果、迫力あるアクションシークエンス、そしてプリータムによる音楽は高く評価されました。一方で、物語の構成、脚本、キャラクター描写、特に台詞回しについては批判的な意見が多く寄せられました。Rotten Tomatoesでは支持率52%、Metacriticでは57/100という評価が得られています。批評家からは「映像的なスペクタクルは素晴らしいが、感情的な繋がりが希薄」「脚本が弱点」といった指摘がある一方で、「インド神話を取り入れた野心的な作品」「視覚的な饗宴」といった肯定的な評価も見られます。

劇場公開後、本作は主要なストリーミングサービス（Disney+, Hulu, Star+など）でも配信が開始され、より多くの観客が視聴できるようになりました。

今後の展開

『ブラフマーストラ』は三部作構成の「アストラバース」第一作であり、既に第二作『Brahmāstra: Part Two – Dev』が2026年12月、第三作が2027年12月に公開予定です。また、アストラバースは映画シリーズに留まらず、ストリーミングシリーズ、ゲーム、マーチャンダイジングなど、多角的なメディア展開が構想されています。さらに、シャー・ルク・カーンが演じたモーハン博士を主人公にしたスピンオフ企画も検討されているなど、壮大なユニバースの広がりが期待されています。

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