ブルおじさん

トムとジェリー：ブルおじさん(Fit to Be Tied)の詳細解説

1952年7月26日に公開されたトムとジェリーシリーズの短編アニメーション『ブルおじさん』(Fit to Be Tied)は、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督による作品です。メトロ・ゴールドウィン・メイヤー・カートゥーン・スタジオ制作、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー配給という、シリーズにおける標準的な制作体制がとられています。

物語は、街を散歩中のブルドッグ、スパイク（ブルおじさん）が画鋲を踏んでしまうことから始まります。激痛に悶えるスパイクに、ジェリーが親切にも画鋲を抜いてあげます。恩を受けたスパイクは、ジェリーに感謝の印として小さなベルを贈ります。このベルは、ジェリーが困った時にスパイクを呼ぶためのものです。

早速、トムに追いかけられたジェリーは、スパイクを呼ぶためにベルを鳴らします。駆けつけたスパイクは、トムを痛烈に懲らしめます。トムはジェリーを自由に攻撃できなくなり、事実上ジェリーの召使いのような状態になります。

しかし、状況は反転します。トムは新聞で「犬への首輪・鎖着用義務化」のニュースを読み、スパイクを鎖で繋がれた状態にすることで、ジェリーを自由に攻撃できるようになったのです。トムはスパイクをからかい、ジェリーをこき使います。ジェリーはベルを鳴らしても、鎖につながれたスパイクはトムを助けることができません。

ところが、今度はジェリーが新聞記事を見つけます。「動物愛護団体からの抗議により、犬への首輪・鎖着用義務化法令は廃止」という朗報です。ジェリーはトムを新聞紙で殴り、トムが反撃するとベルを鳴らします。しかし、トムはスパイクの助けを期待していません。その隙に、自由になったスパイクがトムに復讐を開始します。

スパイクはトムに首輪とリードをつけ、ジェリーがベルを鳴らすたびにトムを蹴るという、痛快な仕返しをします。この結末は、1944年のトムとジェリー作品『命の恩人』とは対照的で、スパイクとジェリー、そしてトムの立場が完全に逆転する、痛快な展開を見せています。

登場人物

トム: ジェリーに助けを求めるベルの合図を無視し、ジェリーをいじめる。スパイクの鎖につながれた状態を見て、ジェリーを自由に攻撃する。しかし、法令廃止後も、スパイクの復讐を受けることになる。
ジェリー: スパイクに助けられ、トムから身を守る。法令の変更を逆手に取り、スパイクを利用してトムを懲らしめる。
* スパイク: ジェリーへの恩返しとしてベルを贈る。法令により鎖で繋がれるも、ジェリーと共にトムに復讐する。

作品背景と影響

『ブルおじさん』は、基本的なコンセプトは1944年の『命の恩人』と似ていますが、結末は全く異なります。『ブルおじさん』でトムがスパイクをからかうシーンは、1955年の『映画大会』でも再利用されています。日本では、TBS系などで1964年から1990年代まで放送され、DVDにも収録されています。

『ブルおじさん』は、トムとジェリーシリーズの中でも特に記憶に残る作品の一つであり、そのユーモラスな展開と痛快な復讐劇は、長年にわたって多くの視聴者を魅了し続けています。スパイクの行動、ジェリーの機転、トムの悪運など、キャラクターの魅力が際立つ作品と言えるでしょう。

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