ブルゴーニュ王朝

ブルゴーニュ王朝：ポルトガル王国の礎を築いた時代

ブルゴーニュ王朝は、1143年から1383年までポルトガルを支配した最初の王朝であり、ポルトガルの歴史において重要な位置を占めています。王朝の創始者であるアフォンソ1世の父、アンリがブルゴーニュ出身であったことが、その名の由来です。

王国の成立

ポルトガル王国の起源は、イベリア半島におけるキリスト教国によるレコンキスタ（国土回復運動）に遡ります。フランスのカペー家の支流であるブルゴーニュ家のアンリ・ド・ブルゴーニュは、カスティーリャ＝レオン王国のレコンキスタに参加し、その功績によりポルトゥカーレとコインブラの伯爵位を授けられました。アンリの死後、ポルトガルではガリシアの貴族が勢力を拡大し、地元の貴族たちはこれに抵抗しました。その結果、アンリの子であるアフォンソ・エンリケス（後のアフォンソ1世）が指導者として擁立され、カスティーリャ＝レオンからの独立を目指すことになります。

1139年、アフォンソ1世はオーリッケの戦いでムラービト朝に勝利し、ポルトガル王を称しました。その後、ローマ教皇の仲介により、1143年にカスティーリャ＝レオンもポルトガル王位を承認し、ポルトガル王国が成立しました。アフォンソ1世は教皇アレクサンデル3世と封建的主従関係を結び、1179年にローマ教皇庁から正式に国王として認められました。

レコンキスタの推進

アフォンソ1世の治世下では、首都コインブラを拠点としてレコンキスタが積極的に進められました。1147年には、イスラム教徒からリスボンを奪取し、領土を拡大しました。モンデゴ川以北では、自由小土地所有者の中から現れた平民騎士がレコンキスタの主力として活躍し、モンデゴ川以南では、十字軍騎士と騎士修道会が戦争と植民に従事しました。レコンキスタはさらに南下し、1168年までにアレンテージョ地方全域がポルトガルの支配下に入りました。1249年には、アルガルヴェ東部のファロとシルヴェスを陥落させ、ポルトガルにおけるレコンキスタが完了しました。

王国の繁栄

アフォンソ3世は、1255年に首都をコインブラからリスボンへ遷都しました。次のディニス1世の治世下では、教会との抗争が終結し、中央集権化が進められました。ローマ法が導入され、騎士団勢力は王権の支配下に組み入れられました。また、殖民と干拓が推進され、定期市の開催を認める特許状が発布されたことで、国内交易が活発化しました。農業の発達と商業の発展により、ジェノヴァやフィレンツェなどのイタリア商人が王国内で活動を始めました。1297年には、カスティーリャ王国との国境が確定し、ヨーロッパ最古の国境線として長く存続することになります。海運の安定化を図るために保険制度が創設され、海軍も増強されました。

王朝の交代

14世紀中ごろにヨーロッパで流行したペストは、ポルトガルにも大きな影響を与え、人口の約3分の1が失われました。労働人口の減少により農村部では農民一揆が頻発し、貴族・領主は農民の移動を制限する法令を発布させましたが、効果は限定的でした。フェルナンド1世はカスティーリャの王位継承問題に介入し、3度にわたって戦争を挑みましたが、勝利を収めることはできませんでした。戦争と教会大分裂はポルトガルに大きな痛手を与え、国土は荒廃し、海軍は壊滅しました。1383年にフェルナンド1世が没すると、後継者問題が生じ、国内は政治的危機に見舞われました。最終的に、アヴィス騎士団長のドン・ジョアンがポルトガル王に選出され、ジョアン1世として即位し、アヴィス王朝が創始されました。

社会構造

ポルトガル国王は強い王権を保持しており、多くの直属の家臣と最高裁判権を有していました。教会勢力と騎士修道会は王権に対抗できるだけの力を持っており、大貴族は国王に従軍する義務を負う代わりに、領地内での完全な裁判権などの特権を認められていました。アフォンソ2世以降の国王は貴族勢力・聖職者の抑制を試み、検地と所領確認制を実施しました。レコンキスタの過程で大きな役割を果たした騎士修道会は、レコンキスタ終了後もポルトガルの大荘園領主となり、ポルトガル王は南部に領地を持つ騎士団と協調を図りながら政策を展開しました。モンデゴ川以北でのレコンキスタに参加した平民騎士は、兵力の提供と引き換えに様々な特権を与えられ、後にオーメン・ボンと呼ばれるようになりました。都市や村落に成立したコンセーリョは、国王や領主からフォラルを授与され、租税・裁判に関する権利と義務が制定されました。

経済の発展と停滞

ディニス1世の時代には、開墾が進み、各地で定期市が開かれるようになり、フランドルやイギリスへの輸出も活発に行われました。1303年には、ポルトガル商人はイギリス内の港湾における特権を付与されました。主な輸出品としては、ワイン、オリーブ油、塩、イチジク、アーモンドなどが挙げられます。しかし、14世紀に入ると経済の成長は停滞し、人口の増加は食料の不足と物価の高騰をもたらしました。黒死病の流行によって労働力が減少した後、収益率の高いワイン、オリーブ油が穀物よりも優先して生産されましたが、都市部での穀物の需要は増加しており、ポルトガルは長らく穀物不足に悩まされることになります。

文化の隆盛

ポルトガル文化はカトリック教会の影響下にあり、クリュニー修道会やシトー修道会は国の保護を受け、土地が寄進されました。コインブラ大聖堂などのロマネスク様式の建築物が造られ、アフォンソ1世の寄進によって建立されたアルコバッサ修道院はロマネスク様式からゴシック様式への過渡期に完成した中世ポルトガル最大の建築物です。また、宮廷では詩と音楽が発達し、ディニス1世は宮廷に出入りする詩人を保護し、自らも詩作を嗜みました。1290年には、ディニス1世によってリスボンにコインブラ大学の前身であるエストゥード・ジェラルが設置され、法学、文学、論理学、医学が教授されました。

ブルゴーニュ王朝は、ポルトガル王国の基礎を築き、その後の発展に大きな影響を与えました。レコンキスタの推進、リスボンへの遷都、経済の発展、文化の隆盛など、その功績は多岐にわたります。しかし、14世紀に入ると、ペストの流行や戦争の敗北などにより衰退し、アヴィス王朝へと交代することになります。

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