モンデゴ川

モンデゴ川は、その全流路がポルトガル共和国の国土内に収まっている河川としては、国内最長の存在として特筆されます。この川は、ポルトガル本土において最も標高の高い山脈であるイシュトレーラ山脈の深部に源を発しています。源流からおよそ234キロメートルにわたる道のりを流れ下り、古都として知られるコインブラの街を通過し、最終的にはポルトガル西部の大西洋岸に位置するフィゲイラ・ダ・フォシュの町でその旅を終え、海へと合流します。

特に、モンデゴ川が大西洋に注ぎ込むフィゲイラ・ダ・フォシュ近郊の河口域は、その生態学的な重要性から注目されています。この一帯では、広大な三角江が形成され、その内部や周辺に広がるムラセイラ島を含めて、驚くほど多様な湿地環境が見られます。具体的には、日々の干満によって特徴づけられる潮間帯、塩分濃度の高い土地に適応した植物が群生する塩性湿地、降雨後に塩分が地上に析出する塩類平原、そして背の高いヨシが密生するヨシ原など、さまざまなタイプの湿地が隣接しています。さらに、かつてあるいは現在も利用されているコメの田んぼや、養殖を目的とした養魚池なども点在しており、自然の環境と人為的な改変を受けた環境がモザイク状に混在しています。

このような多様で生産性の高い湿地環境は、非常に多くの種類の野生生物にとって豊かな生息地を提供しています。中でも鳥類にとっては極めて重要な場所であり、長距離を移動する渡り鳥の中継地として、また繁殖期の営巣地として機能しています。特に渉禽類と呼ばれる、水辺で採餌する鳥類にとっては、渡りの途中で休息し、エネルギーを補給するための不可欠な拠り所となっています。この地域を中継地として利用する代表的な鳥類には、特徴的な上向きの嘴を持つソリハシセイタカシギや、優雅な姿で知られるオオフラミンゴなどが挙げられます。また、すらりとした脚が目を引くセイタカシギや、水面を素早くかすめるように飛ぶコアジサシといった鳥類は、この地で繁殖を行う重要な種として確認されています。これらの鳥類にとって、河口域の複雑な環境は生存と次世代を育むための安全な場所と豊富な食料資源を提供しています。

モンデゴ川の河口域は、鳥類だけでなく水生生物にとっても生産性の高い環境であり、古くから漁業が営まれてきました。海と川を行き来する回遊性の魚類などが生息しており、特定の魚種を対象とした漁獲が行われています。例えば、生物学的に興味深い原始的な魚類であるウミヤツメや、ニシン科に属し、川を遡上して繁殖するアリスシャッドやトウェイトシャッドといった魚種が、この水域で漁獲されています。河口の汽水域は、これらの魚類が成長したり、繁殖のために上流へ移動したり、あるいは成長後に海へ下る際の重要な中継点や生育場所としての役割を果たしています。

モンデゴ川河口域が持つ豊かな生態系と、それを支える湿地の価値は、国際的なレベルでも高く評価されています。この地域が多様な生物種にとって不可欠な生息地となっていることを踏まえ、国際的に重要な湿地として保全されることとなりました。具体的には、湿地の保全と持続可能な利用を目指すラムサール条約に基づき、2005年に「モンデゴ河口域」として登録されました。この登録は、この地域の湿地生態系が持つ価値の高さを示すものであり、今後もその環境が適切に管理・保全されていくことの重要性を強調するものです。ラムサール条約による国際的な認知と協力は、この貴重な自然環境を守り、将来にわたってその恩恵を享受していくための重要な枠組みとなっています。

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