ブルース・シンガー

ブルース・シンガー（Blues Singer）

アメリカを代表するブルース・ギタリスト兼シンガー、バディ・ガイが2003年にリリースしたスタジオ・アルバム。伝説的ブルースマン、マディ・ウォーターズの1964年の名盤『Folk Singer』への深い敬意を込めて制作された。

本作は、前作『スウィート・ティー』（2001年）で聴かせたパワフルで生々しいエレクトリック・ブルースから一転し、アコースティックなサウンドを前面に押し出しているのが特徴である。プロデューサーには、前作に引き続き、カウンティング・クロウズなどの作品でも知られるデニス・ヘリングが起用された。

アルバムには豪華なゲストミュージシャンが参加しており、特に注目されるのは「クローリング・キングスネーク」での共演だ。ここでは、ブルース界の至宝であるB.B.キングとエリック・クラプトンがリードギターで参加し、世代を超えた共演が実現した。クラプトンはさらに「ルーシー・メイ・ブルース」でもギターを演奏している。他の参加ミュージシャンには、ギタリストのジンボ・マサス、アップライト・ベーシストのトニー・ガルニエ、ドラマーのジム・ケルトナーらが名を連ねている。

日本国内では、バディ・ガイが2005年6月に行った日本公演に合わせて、同年5月25日に日本盤CD (BVCM-31163)がリリースされた。

本作に対する反響は様々だった。アメリカの主要アルバムチャートであるBillboard 200では、2003年6月21日付で最高位188位を記録したが、トップ200圏内に留まったのはその1週間のみだった。一方、専門チャートでは確かな評価を得ており、『ビルボード』のブルース・アルバム・チャートでは最高3位、トップ・ヒートシーカーズ（新人やブレイク前のアーティストを対象としたチャート）では最高12位にランクインしている。

そして、本作は音楽界で最も権威ある賞の一つであるグラミー賞において、第46回（2004年）の最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞を受賞するという栄誉に輝いた。

ただし、音楽評論家の間では評価が分かれた面もある。例えば、オールミュージックの批評家スティーヴン・トーマス・アールワインは、本作に5点満点中2点という比較的低い評価を与えた。彼は、前作『スウィート・ティー』にあった予期せぬほど生々しいエネルギーとは対照的に、本作のアコースティックなアプローチについて言及し、アコースティック・ブルースは必ずしもガイの最も得意とするスタイルではないと指摘している。ガイは過去にジュニア・ウェルズとのアコースティック・セッションで優れた演奏を残しているものの、純粋なアコースティック・アルバムとしては、彼の真骨頂が発揮されていないと感じられたのかもしれない。

主な収録曲

ハード・タイム・キリング・フロア
クローリング・キングスネーク (feat. B.B.キング & エリック・クラプトン)
ルーシー・メイ・ブルース (feat. エリック・クラプトン)
キャント・シー・ベイビー
アイ・ラヴ・ザ・ライフ・アイ・リヴ
ルイーズ・マギー
モーニン・アンド・グローニン
ブラック・キャット・ブルース
バッド・ライフ・ブルース
サリー・メイ
アンナ・リー
ロンサム・ホーム・ブルース

主な参加ミュージシャン

バディ・ガイ (ボーカル、アコースティック・ギター)
ジンボ・マサス (ギター)
B.B.キング (リードギター)
エリック・クラプトン (リードギター)
トニー・ガルニエ (アップライト・ベース)
ジム・ケルトナー (ドラムス)
* The Perrys (手拍子、フィンガースナップ)

このアルバムは、バディ・ガイが自身の音楽的ルーツの一つであるアコースティック・ブルースに立ち返り、偉大な先達への敬意を示した作品として、彼のキャリアにおいて重要な位置を占めている。評論家の意見は分かれたものの、グラミー賞受賞という形でその質は高く評価されたと言えるだろう。

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