ブルース氏族

ブルース氏族の歴史

ブルース氏族（スコットランド・ゲール語: Clann Brus）は、スコットランドのキンカーディンを起源とする由緒ある氏族です。14世紀には2人のスコットランド王を輩出した王家でもあります。

起源

ブルースという姓は、フランス・ノルマンディーのシェルブールとヴァロネの間にある、現在のブリという地域に由来する「de Brus」または「de Bruis」というフランス語からきています。1106年、イングランド王ヘンリー1世がタンシュブレーの戦いで勝利した後、初代アナンデイル領主ロバート・ドゥ・ブルースがイングランドに渡ったのが、この一族の記録における始まりです。彼はヨークシャーで80の荘園を与えられ、後にスケルトン周辺で13の荘園を与えられました。1124年、スコットランド王デイヴィッド1世からアナンデイルの領主の地位を授かりました。ロバートはギスボロウ小修道院を設立しています。一族の祖であるロバート・ドゥ・ブルースは、1066年にウィリアム1世とともにイングランドに渡ったノルマンディーの騎士とされていましたが、ヘイスティングズの戦いの名簿にはその記述がなく、実際には1106年にイングランドに渡ったと考えられています。

ロバート・ドゥ・ブルースは、デイヴィッド王子（後のスコットランド王デイヴィッド1世）の騎士として仕え、1124年にはデイヴィッド1世のスコットランド北部奪還にも従事しました。イングランドで内戦が勃発すると、デイヴィッド1世は軍を率いてイングランドに侵攻しましたが、ロバート・ドゥ・ブルースはデイヴィッド1世に従わず、イングランド側について1138年のスタンダードの戦いで、アナンデイルの領主として知られる自身の息子を捕虜にしました。初代アナンデイル領主ロバート・ドゥ・ブルースは、1141年5月11日に亡くなり、ギスブルンの地に埋葬されました。

王統の根拠

ブルース氏族のスコットランド王位請求の根拠は、1219年に第4代アナンデイル領主ロバート・ドゥ・ブルースが、ハンティンドン伯デイヴィッドの娘で、スコットランド王ウィリアム1世の姪にあたるイゾベル・オブ・ハンティンドンと結婚したことにあります。この結婚は、両家に莫大な富をもたらしました。2人の息子で「競合者」として知られる第5代アナンデイル領主ロバート・ドゥ・ブルースは、時には王位後継者と見なされることもありました。

スコットランド王アレグザンダー3世の死後、ブルース家とジョン・ベイリャル家が王位を争いました。アレグザンダー3世の孫娘であるノルウェーの乙女マルグレーテ（マーガレット）が後継者に指名されましたが、1290年にスコットランドへ渡航中に亡くなりました。マルグレーテの死後、内戦を恐れたスコットランド王国の守護官は、イングランド王エドワード1世に仲裁を求めました。エドワード1世は、スコットランドをウェールズのように支配しようと長年企てていたため、これを好機と捉え、1292年にベイリャルをスコットランド王に指名しました。しかし、ベイリャルはエドワード1世に反旗を翻し、最終的には敗北して1296年のダンバーの戦いの後に退位させられました。

王冠の獲得

ジョン・ベイリャルの退位により、スコットランドは事実上、君主不在となりました。ロバート・ザ・ブルースは、ベリック・アポン・ツイードでエドワード1世に忠誠を誓いましたが、翌年のスコットランドの反乱に参加した際にこの誓いを破棄しました。1297年の夏には再びエドワード1世に忠誠を誓いましたが、スターリング・ブリッジの戦いの期間中にはスコットランド側につきました。フォルカークの戦い後、エドワード1世が勝利するとイングランド側につき、ブルースの領地はエドワード1世の支配を免れました。ブルースは、エドワード1世への忠誠こそが生き残る道だと考えたのかもしれません。

ブルースと王位を争っていたジョン3世・カミンは、ウィリアム・ウォレスから「スコットランド王国の守護官」の地位を継承しましたが、両者の敵対心はスコットランドの安全を脅かしました。ダンフリーズのグレイフィアーズ教会で会談が行われることになりましたが、ブルースはカミンを刺殺し、ローマ教皇クレメンス5世によって破門されました。しかし、ロバート・ザ・ブルースは1306年にスクーンでスコットランド王ロバート1世として戴冠しました。ロバート1世はスコットランド軍を率い、1314年のバノックバーンの戦いでイングランド軍に勝利しました。

1334年には、ブルース王家の血縁を主張するトーマス・ブルースが、ロバート・スチュワートとともにイングランドに対して立ち上がりました。

ロバート1世没後

1329年にロバート1世が亡くなると、息子のデイヴィッド2世がスコットランド王になりました。1346年にデイヴィッド2世は、フランスとの「古い同盟」に基づいてイングランドに侵攻しましたが、ネヴィルズ・クロスの戦いで敗れ、捕虜として7年間イングランドに拘留されました。和平交渉の後、デイヴィッド2世はスコットランドに帰還し、エディンバラ城で統治しましたが、1371年に子供を残さずに亡くなりました。そのため、王位はスチュワート家に移りました。

エリザベス朝下の1597年、エドワード・ブルース卿はキンロス修道院の聖職禄一時保有者となり裁判官に任命されました。1601年にはキンロス卿の称号を得て議会の貴族議員に任命され、1603年のスコットランド王ジェイムズ6世によるイングランド王位請求に同行しました。その後、エドワード・ブルースは記録長官として裁判所の役人に任命され、1608年にはキンロスのブルース卿としてロード・オブ・パーラメントに叙任されました。1633年には、エドワード・ブルースの息子であるトマス・ブルースが初代エルギン伯爵に叙任されました。第4代エルギン伯が嗣子なく亡くなると、称号はすでにキンカーディン伯爵の称号を持っていたジョージ・ブルース・オブ・カルノックの子孫に移り、1747年に2つの伯位が統合されました。

第7代エルギン伯トーマス・ブルースは外交官で、1799年から1803年まで在オスマン帝国大使を務めました。彼は、パルテノン神殿から大理石彫刻作品を救い出し、自身の財産を多く費やしました。これらの彫刻作品は、現在「エルギン・マーブル」として知られています。彼の息子ジェイムズは、カナダ総督およびインド総督を務めました。

氏族長

現在の氏族長は、第11代エルギン伯アンドリュー・ブルースで、スコットランド族長常任会議の招集者でもあります。

城址

ブルース氏族が所有していた城址は以下の通りです。

ファイヴィー城
エアース城
ムネス城
トマストン城
カロロス宮殿
クラックマナン塔
フィンガスク城
キンロス・ハウス
ローフ・リーヴェン城
ロークマベン城
タンベリー城

参考文献

Blakely, Ruth Margaret (2005). The Brus family in England and Scotland, 1100–1295. Boydell Press.

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