ブルーノ・ブロイアー

ブルーノ・ブロイアー：ドイツ空軍降下猟兵大将の生涯

ブルーノ・ブロイアー(1893年-1947年)は、ドイツ国防軍空軍の降下猟兵大将として知られています。第一次世界大戦で鉄十字章を受章した彼は、ヴァイマル共和国軍を経て、ドイツ空軍の空挺部隊創設期からその発展に深く関与しました。本稿では、彼の軍歴、人物像、そしてクレタ島での活動を中心に、その生涯を詳細に見ていきます。

華々しい軍歴の始まり

1905年、ブロイアーは陸軍士官候補生として軍務に就きました。第一次世界大戦では第7西プロシア歩兵連隊に所属し、勇敢な戦いぶりで一級鉄十字章と二級鉄十字章を受章しています。戦後、ヴァイマル共和国軍に加わった彼は、ゲネラル・ゲーリング連隊第I大隊の指揮官に就任。この大隊はドイツ最初の空挺部隊であり、1936年、ブロイアーは少佐として、航空機からの降下を敢行した最初のドイツ降下猟兵となりました。ただし、この際の降下は、後の降下作戦のように機体側面からの降下ではなく、機体上部からの降下だったという特異性を持っています。

ポーランド、フランス、そしてオランダでの活躍

1938年、ブロイアーは第1降下猟兵連隊の指揮官に昇進。ポーランド、フランス、オランダ、バルカン半島での戦闘に参加し、その卓越した指揮能力を発揮しました。特にオランダ侵攻作戦における活躍は際立っており、ムールデイクとドルトレヒトの橋の確保において、困難な状況下で大胆な作戦を展開、成功に導いています。この功績により、彼は騎士鉄十字章を受章しています。また、英国侵攻作戦「アシカ作戦」でも先鋒部隊の指揮を執る予定だったことが知られています。

クレタ島の戦い

1941年5月、クレタ島侵攻作戦において、ブロイアーは第1降下猟兵連隊と第2降下猟兵連隊第II大隊を指揮しました。イラクリオン飛行場の制圧を任務とするも、作戦は予想以上に困難を極め、激しい戦闘が繰り広げられました。しかし、連合軍の撤退後、ブロイアーはクレタ島の司令官に就任します。当初は住民との摩擦も多かったものの、彼は徐々に住民との信頼関係を構築し、「人情味のある司令官」として知られるようになりました。中でも、後のギリシャ首相となるコンスタンディノス・ミツォタキスを釈放したエピソードは有名です。スターリングラードの戦い、エル・アラメインの戦いでのドイツ軍の敗北を受け、ブロイアーは島の防衛体制強化に尽力しましたが、後にミュラー将軍に司令官の座を譲ることになります。

終戦と死刑判決

1945年1月、ブロイアーは第9降下猟兵師団を編成しますが、この師団はソ連軍の攻勢の前に壊滅的な損害を受けます。終戦後、クレタ島での残虐行為に関与したとしてアテネの法廷に送られました。3000人以上のクレタ島住民の死に関与したとして、死刑を宣告され、1947年5月20日、クレタ島侵攻記念日に銃殺刑に処せられました。歴史家アントニー・ビーヴァーは彼を「本当についていない男」と評しています。近年、ドイツ降下猟兵協会は、彼の遺体をクレタ島に移転するよう働きかけ、現在、クレタ島侵攻時に戦死したドイツ兵の墓地に埋葬されています。

まとめ

ブルーノ・ブロイアーの生涯は、ドイツ軍の激動の時代を象徴するものです。空挺部隊のパイオニアとして輝かしい功績を残した一方、戦争犯罪の責任を問われ、悲劇的な最期を遂げました。彼の功績と罪、その両面を理解することで、第二次世界大戦の歴史をより深く理解することができるでしょう。彼の物語は、戦争の残酷さと、個人の運命が歴史の流れに翻弄される様子を私たちに伝えています。また、クレタ島における彼の行動は、戦争と占領下における指導者の役割、そして住民との関係性の複雑さを改めて考えさせるものです。彼の功績と罪、そしてその人生は、歴史の複雑さと多面性を示す重要な事例として、今後も研究され続けることでしょう。

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