プジョー・405

プジョー405：フランスが生んだ名車とその日本市場での苦闘

プジョー405は、フランスの自動車メーカー、プジョー社が1987年に発売した中型乗用車です。404以来17年ぶりの400番台モデルとして登場し、その洗練されたデザインと優れた走行性能で高い評価を獲得、1988年には権威ある『ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー』を受賞しました。

優れたデザインと多様なバリエーション

405のデザインは、名門デザインハウス、ピニンファリーナの手によるものです。同社のデザインした205やアルファロメオ164にも通じる、滑らかで美しいボディラインが特徴的でした。車体サイズは、上位モデルである505に近い大きさで、広々とした室内空間を提供しました。ボディタイプも豊富で、セダンに加え、実用的な5ドアワゴンのブレークモデルもラインナップされました。

充実のエンジンバリエーションと高い走行性能

エンジンは、1.4L、1.6L、1.9Lの直列4気筒SOHCガソリンエンジンに加え、WRC参戦で培われた技術を活かした、1.9L DOHC 16バルブエンジンを搭載したスポーティグレードの「MI16」も設定されました。このDOHCエンジンは、プジョー社にとって戦後初搭載となるものでした。サスペンションは、205と同様のマクファーソンストラット/トレーリングアーム式を採用し、優れたハンドリングを実現していました。

その後、ディーゼルエンジンや4WDモデルも追加され、バリエーションはさらに広がりました。1993年にはマイナーチェンジを実施。ボディ剛性の強化、トランクリッドの見切り線の変更、ダッシュボードのデザイン変更など、改良が加えられました。また、エンジンも1.8L、2.0Lへと排気量が変更され、MI16にも2.0Lエンジンが搭載されました。さらに、2.0L DOHCターボエンジンと4WDを組み合わせた「T16」も登場しました。

日本市場での販売と課題

205GTIの成功により、日本市場でのプジョーの認知度が向上しつつあった中、405は戦略車種として大きな期待が寄せられました。しかし、日本市場への導入は本国より遅れ、1989年9月に発売開始となりました。販売はオースチン・ローバー・ジャパンとスズキが行いました。

日本仕様は、1.9L SOHCエンジン搭載のSRI、上級グレードのSRI-EX、そしてDOHCエンジンのMI16などがラインナップされました。盗難防止対策として、オーディオには開閉式のカバーが装備されていました。その後、ワゴンモデルや中間グレード、さらに上級グレードのグリフなどが追加されました。マイナーチェンジを経て、最終的にはSRI-EX、MI16、グリフの3車種が販売されました。

しかし、販売実績は必ずしも芳しくありませんでした。「プジョー＝ホットハッチ」という日本市場でのイメージ、1.9L～2.0Lエンジンにも関わらず3ナンバーサイズとなるボディ、BXより高い価格設定、そして初期のトラブルの多さなどが販売を阻む要因となりました。

グローバルな展開と生産終了

ヨーロッパでの生産は1997年に終了しましたが、イランやエジプトなどでは2020年まで生産が続けられました。北米市場には1991年頃まで輸出されていましたが、405を最後にプジョーは北米市場から撤退しました。プジョー405は、優れた技術と魅力的なデザインを持つ車でしたが、市場環境や販売戦略などの要因から、日本市場では成功を収めることができませんでした。その歴史は、自動車市場における成功と失敗の両面を学ぶ上で貴重な事例と言えるでしょう。

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