プラウィット・ウォンスワン

プラウィット・ウォンスワンの生涯と政治的役割

プラウィット・ウォンスワン（Prawit Wongsuwaan）は、1945年8月11日にタイのプラナコーン県で生まれました。彼はタイ王国の軍人、政治家であり、陸軍大将の階級を持つ人物です。タイでは、親しみを込めて「ポム（ป้อม）」や「ポムおじさん（ลุงป้อม）」という愛称で呼ばれています。

軍人としての経歴

プラウィットは、1969年にチュラチョームクラオ陸軍士官学校を卒業後、軍人としてのキャリアをスタートさせました。東部地域第1軍地域に所属し、歩兵第21連隊国王親衛隊で上級将校として活躍しました。この時期に、後の首相となるプラユット・チャンオチャと出会い、親交を深めています。

政治家としての活動

2008年、アピシット・ウェーチャチーワ内閣で国防大臣に就任し、政治の世界へと足を踏み入れました。2010年には、反独裁民主戦線（UDD）のデモ鎮圧における警備活動で注目を集めました。この頃から、軍事的指導力から「ピーヤイ」と呼ばれるようになり、プラユットの昇進を助けるなど、両者の関係をより強固なものにしました。

2014年、プラユットが率いる国家平和秩序評議会（NCPO）によるクーデター後、プラウィットはNCPOの諮問委員長に就任。さらに、副首相、国防大臣を兼任し、50以上の政治委員会の委員長も務めました。2020年には、国民国家の力党（PPRP）の党首に選出され、親軍的な党体制を確立しました。2022年には、憲法裁判所の命令によりプラユットの首相職が一時停止された際、1ヶ月間、首相代理を務めています。

政党間の対立と総選挙後の動向

2022年後半には、PPRP内での政治的方向性の違いから、プラユットとの間に意見の対立が生じました。プラユットはPPRPを離党し、新たな政党を結成。これに対し、プラウィットはPPRPのイメージ刷新を図り、より民主的な活動を展開しました。2023年5月の総選挙では、PPRPは議席を大きく減らしましたが、プラウィットは党首および議員の地位を維持し、政治活動を続けています。

スキャンダルと疑惑

プラウィットの政治キャリアには、いくつかのスキャンダルや疑惑がつきまといました。2018年には、高級腕時計の資産未申告疑惑が浮上。国家汚職追放委員会（NACC）に申告していないとされる25個以上の高級腕時計（総額約120億円相当）を所持していることが発覚しました。プラウィットは、友人の借り物であると主張し疑惑の火消しに奔走しましたが、彼のイメージに大きな傷を残すことになりました。

また、2018年のプーケット船沈没事故に関する発言や、2019年のケニアホテル襲撃事件に関する発言も、国内外から強い非難を浴びました。これらの失言は、彼に対する国民の信頼を大きく損ねる要因となりました。

受勲歴

プラウィットは、タイ国内外から多数の栄典を授与されています。

タイの栄典

1950年: ラーマ9世戴冠メダル
2008年: 第一級ボーイスカウト勲章
1983年: チャクラ・マーラーメダル
1974年: 国境警備勲章
1982年: 第一級解放奴隷防衛勲章
1973年: ベトナム戦勝メダル（炎装飾）
2005年: チュラチョームクラーオ勲章勲三特等グランド・コンパニオン
2000年: タイ王冠勲章勲特等ナイト・グランド・コルドン
2003年: 白象勲章勲特等ナイト・グランド・コルドン

海外の栄典

シンガポール: 2005年 - ピンガット・ジャサ・ゲミラン(テンテラ)コイン
ラオス: 2010年 - チャイ・ミートラパープメダル
アメリカ合衆国: 陸軍表敬メダル
* ベトナム共和国: シルバーアクションユニット・ツァイヒェン、対ベトナム活動コイン

これらの栄典は、彼の軍人および政治家としての貢献を物語っています。

まとめ

プラウィット・ウォンスワンは、タイの政治と軍事の両分野で重要な役割を果たしてきた人物です。軍人としてのキャリア、国防大臣、副首相、首相代行など、さまざまな要職を歴任しました。一方で、スキャンダルや失言も多く、その政治手腕に対する評価は賛否両論あります。しかし、タイの政治史において、彼の名前が記憶されることは間違いないでしょう。

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