プラナー

プラナーレンズ

プラナー（Planar）は、1897年にパウル・ルドルフによって発明されたカール・ツァイスの写真レンズです。ツァイス・アナスチグマートのシリーズIAとして登場しました。このレンズは、ダブルガウス型をベースにした設計で、その特徴は完全な前後対称性です。

プラナーの構造と特徴

プラナーは、ダブルガウス型の発展過程における重要なレンズの一つです。対称的な構造は、像面湾曲や歪曲収差を効果的に抑制します。レンズの名前である「プラナー」は、ドイツ語で「平坦」を意味する「Plan」に由来し、その優れた平坦性が特徴です。初期のプラナーは、コマ収差の抑制が難しく、空気面が多いという課題がありました。しかし、コーティング技術の進歩や設計の改良により、これらの問題は解決されました。特に、ツァイスのTコーティングやTコーティング技術は、プラナーの性能を飛躍的に向上させました。

一眼レフカメラにおいては、ライバルであるゾナーがバックフォーカスの短さから構造上の制約があったのに対し、プラナーはその汎用性の高さから標準レンズとして広く採用され、ツァイスの看板レンズとしての地位を確立しました。プラナーは、標準レンズだけでなく、一部の大口径望遠レンズにも採用されています。

Sプラナーとマクロプラナー

Sプラナー（S-Planar）は、特殊用途（ドイツ語で「Sonder」）向けに開発されたレンズで、その多くはいわゆるマクロレンズとして知られています。後に、一般向け製品はマクロプラナー（Makro-Planar）という名称に変更されました。Sプラナーには、半導体露光装置用や引き伸ばしレンズ、マイクロフィルム用レンズなど、多様な用途に応じた製品が存在します。

各マウント対応のプラナーレンズ

プラナーレンズは、様々なカメラマウントに対応した製品が展開されています。以下に主な製品をまとめます。

キヤノンEFマウント

プラナー50mm F1.4 (コシナ製 ZEマウント)
マクロプラナー50mm F2 (コシナ製 ZEマウント)
プラナー85mm F1.4 (コシナ製 ZEマウント)
マクロプラナー100mm F2 (コシナ製 ZEマウント)
Milvus 85mm F1.4 (コシナ製 ZEマウント)
Millvus 50mm F2 (コシナ製 ZEマウント ハーフマクロ)
Millvus 100mm F2 (コシナ製 ZEマウント ハーフマクロ)
Otus 85mm F1.4 (コシナ製 ZEマウント Apo-Planar)
Otus 100mm F1.4 (コシナ製 ZEマウント Apo-Planar)

ニコンFマウント

プラナー50mm F1.4 (コシナ製 ZF/ZF.2マウント)
マクロプラナー50mm F2 (コシナ製 ZF/ZF.2マウント)
プラナー85mm F1.4 (コシナ製 ZF/ZF.2マウント)
マクロプラナー100mm F2 (コシナ製 ZF/ZF.2マウント)
Milvus 85mm F1.4 (コシナ製 ZF.2マウント)
Millvus 50mm F2 (コシナ製 ZF.2マウント ハーフマクロ)
Millvus 100mm F2 (コシナ製 ZF.2マウント ハーフマクロ)
Otus 85mm F1.4 (コシナ製 ZF.2マウント Apo-Planar)
Otus 100mm F1.4 (コシナ製 ZF.2マウント Apo-Planar)

ペンタックスKマウント

プラナー50mm F1.4 (コシナ製 ZKマウント)
マクロプラナー50mm F2 (コシナ製 ZKマウント)
プラナー85mm F1.4 (コシナ製 ZKマウント)
マクロプラナー100mm F2 (コシナ製 ZKマウント)

ソニーAマウント

プラナー50mm F1.4ZA
プラナー85mm F1.4ZA

ソニーEマウント

Touit 32mm F1.8
Loxia 50mm F2
プラナー50mm F1.4ZA

その他のマウント

コンタレックス用
コンタックス用
コンタックスRTS用
コンタックスN用
コンタックス645用
コンタックスG用
グラフレックスXL用
ハッセルブラッドVシリーズ用
ライカマウント
M42マウント
ローライフレックス6×6cm判二眼レフ用
ローライフレックス6000シリーズ用
ローライフレックスSL66シリーズ用
ローライフレックスSL35/SL2000シリーズ用

大判用プラナーレンズ

大判カメラ用のプラナーレンズは、様々な焦点距離のものが製造されました。

プラナーシリーズIA
2cm F3.6から84cm F6までの幅広いラインナップ

産業用・接写用プラナーレンズ

産業用や接写用途向けにも、特殊なSプラナーレンズが開発されました。

S-プラナー100mm F2.8
S-プラナー120mm F5.6
S-プラナー135mm F5.6
マクロプラナー120mm F4

拡大撮影用レンズ

拡大撮影用のプラナーレンズも、RMSマウントを中心に製造されました。

プラナー2cm F4.5
プラナー3.5cm F4.5
プラナー5cm F4.5
プラナー7.5cm F4.5

映画用プラナーレンズ

映画撮影用に設計されたプラナーレンズは、T値が明記され、プロの映像制作の現場で活躍しています。

プラナー32mm T2.1
プラナー55mm T1.3
プラナー85mm T2.1
プラナー85mm T1.4
プラナー85mm T1.3
プラナー135mm T2.1

プラナーレンズの歴史

プラナーレンズは、19世紀末から第二次世界大戦中までの長期間にわたって製造されたため、製造時期によって鏡胴のデザインが大きく異なります。ツァイス製のプラナーレンズには、鏡胴のマウント側に「Serie IA」の刻印が見られます。

まとめ

プラナーレンズは、その優れた光学設計と高い描写性能から、写真史において重要な役割を果たしてきたレンズです。現在でも、多くの写真愛好家やプロフェッショナルに愛用されています。

参考文献

Carl Zeiss Camera Lens Division, The right lens for each situation -- Carl Zeiss camera lens types. Camera Lens News, Nr. 38 (December 2010), p. 11 pdf 2010年12月23日閲覧。
『カメラ年鑑1986年版』日本カメラ社

関連項目

カール・ツァイス
カール・ツァイスのレンズ製品一覧
ツァイス・イコン
コンタレックス
コンタックス
ハッセルブラッド
ローライ
コシナ

関わった設計者

* パウル・ルドルフ

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