プラボウォ・スビアント

プラボウォ・スビアント：インドネシア大統領への軌跡

プラボウォ・スビアント・ジョヨハディクスモ（Prabowo Subianto Djojohadikoesoemo）は、2024年10月20日にインドネシア共和国第8代大統領に就任した政治家であり軍人です。1951年10月7日にジャカルタで生まれ、インドネシア屈指の名門一家に育ちました。父親は経済学者で、スカルノ政権およびスハルト政権で閣僚を歴任したスミトロ・ジョヨハディクスモです。

軍人としてのキャリア

1970年にインドネシア国軍士官学校に入学し、1974年に卒業。陸軍に入隊後、特殊部隊コパススの小隊長として東ティモール併合作戦に参加し、東ティモール独立革命戦線の武力弾圧を指揮しました。1983年にはスハルト元大統領の次女と結婚し、スハルトファミリーの一員として政治的な影響力を増していきます。1990年代には、スハルトによる軍内の粛清を主導し、異例のスピードで昇進。陸軍特殊部隊司令官、陸軍戦略予備軍司令官を歴任し、軍内で強大な権力を掌握しました。

しかし、1997年のアジア通貨危機を機にスハルト政権が崩壊すると、プラボウォも失脚。1998年に軍籍を剥奪され、ヨルダンへ事実上の亡命生活を送ります。

政界への転身と大統領への挑戦

2000年代に入りインドネシアへ帰国。実業家として成功を収めた後、2004年の大統領選挙にゴルカルの候補者として立候補し、政界への復帰を目指します。その後、2008年にグリンドラ党を設立し、本格的な政界進出を果たしました。2009年、2014年、2019年の大統領選挙にも出馬しましたが、いずれもジョコ・ウィドドに敗北。2019年からは国防大臣を務めました。

3度目の正直、大統領就任へ

そして2024年、3度目の挑戦にしてついに大統領の座を掴みました。選挙戦では、ジョコ・ウィドド大統領の長男を副大統領候補に擁立し、ウィドド政権の支持層を取り込むことに成功。得票率59%で圧勝し、インドネシアの新たなリーダーとして就任しました。

人物像

短気で感情のコントロールが苦手な一面も持ち合わせていますが、4匹の猫を飼う愛猫家でもあります。特に最初の猫であるボビー・ケルタネガラは、Instagramで65万人以上のフォロワーを持つ人気者です。

課題と展望

過去の人権問題や、民主主義に対する懐疑的な姿勢など、様々な課題を抱えるプラボウォ大統領。しかし、そのリーダーシップと豊富な経験を活かし、インドネシアのさらなる発展に貢献することが期待されています。

主要な出来事

1951年：ジャカルタで生まれる
1974年：インドネシア国軍士官学校卒業
1976年：東ティモール併合作戦に参加
1983年：スハルト元大統領の次女と結婚
1998年：軍籍剥奪
2008年：グリンドラ党設立
2009年、2014年、2019年：大統領選挙に出馬、落選
2019年：国防大臣に就任
2024年：大統領選挙で当選、第8代大統領に就任

参考文献

本名純「インドネシアの選挙政治における排他的ナショナリズム―2014年プラボウォの挑戦」『アジア研究』第61巻第4号、アジア政経学会、2015年、22-41頁
* 本名純「インドネシアにおける国軍のシビリアン・コントロール - アブドゥルラフマン・ワヒド政権下の政治ゲーム」『立命館国際研究』第14巻第2号、立命館大学、2001年、209-230頁

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