プリファブ・スプラウト

プリファブ・スプラウト：音楽的探求と変遷

プリファブ・スプラウトは、1982年にイギリスのニューカッスル近郊ダーラムで、パディ・マクアルーンを中心に結成されたバンドです。彼らの音楽は、パディのソングライティング、独特なメロディ、そして実験的なアプローチが特徴で、多くの音楽ファンや評論家から高い評価を受けています。

デビューから商業的成功へ

1982年に自主制作盤「Lions In My Own Garden: Exit Someone」でデビュー。このシングルは、BBC Radio 1の番組で頻繁に放送され、CBS Records傘下のKitchenware Recordsの目に留まりました。1984年3月には、Kitchenware Recordsからデビューアルバム『スウーン』がリリースされ、その後、トーマス・ドルビーをプロデューサーに迎え制作されたセカンドアルバム『スティーヴ・マックイーン』が発売されました。アメリカでは、映画俳優のスティーヴ・マックイーンとの関連を避けるため、『Two Wheels Good』というタイトルでリリースされました。次作のアルバム『プロテスト・ソングス』は、当初リリースが見送られ、ストックとなっていました。

1988年に発売されたシングル「The King of Rock 'N' Roll」は、全英チャートで7位を記録し、バンドにとって初のトップ10入りを果たしました。この曲が収録されたアルバム『ラングレー・パークからの挨拶状』には、スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで、ピート・タウンゼンドがギターで参加するなど、豪華なゲストを迎えています。プロデューサー陣も、トーマス・ドルビー、ジョン・ケリー、アンディ・リチャーズなど、複数の人物が関わっています。1989年には、長らくお蔵入りとなっていたアルバム『プロテスト・ソングス』がようやくリリースされました。

『ヨルダン：ザ・カムバック』とバンドの頂点

1990年には、トーマス・ドルビーが全面プロデュースを手掛けたアルバム『ヨルダン：ザ・カムバック』がリリースされ、バンドは音楽的な頂点を迎えました。このアルバムは、ハワード・ヒューズ、ジェシー・ジェイムズ、エルヴィス・プレスリーといった様々な人物像を具現化するようなアプローチが採られています。その多様な楽曲は、バンドの音楽的才能を余すところなく示しています。

1992年には、初のベストアルバム『ア・ライフ・オヴ・サプライジズ』が発売され、シングルカットされた「If You Don't Love Me」は、アメリカのダンスチャートでトップ10入りするヒットとなりました。

メンバーの脱退と活動休止

ドラマーのニール・コンティが、『ヨルダン：ザ・カムバック』の制作途中でバンドを脱退。その後、バンドの活動は一時停滞し、数年間アルバムの制作が行われませんでした。しかし、1997年には7年ぶりのスタジオアルバム『アンドロメダ・ハイツ』がリリースされ、2000年にはイギリスでツアーが開催されました。ただし、ウェンディ・スミスはツアーには参加しませんでした。

1999年にベストアルバム『38 カラット・コレクション』が発売されたことを機に、バンドは古巣のレーベルから離れました。2001年には、それまでのアルバムをまとめたボックスセット『The Collection』がエピックから発売され、ウェンディ・スミスは最初の子供の出産を機にバンドを離れました。バンドは一つのピリオドを迎えることとなりました。

活動再開と新たな試み

2001年には、アメリカ西部開拓時代をテーマにしたコンセプトアルバム『ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ』がリリースされました。公式ウェブサイトが2004年に閉鎖されたため、プリファブ・スプラウトとしての活動はもうないと思われていましたが、2009年には『レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック』が発売されました。このアルバムには、『ヨルダン：ザ・カムバック』発売後の1993年頃に制作されていた未完成の音源が収録されています。

メンバー

パディ・マクアルーン (Paddy McAloon): ボーカル、ギター担当。バンドの楽曲の作詞作曲を手掛ける中心人物。
マーティン・マクアルーン (Martin McAloon): ベース担当。パディの実弟。
ウェンディ・スミス (Wendy Smith): ボーカル、ギター、キーボード担当。アルバム『Andromeda Heights』の制作後に脱退。
ニール・コンティ (Neil Conti): ドラムス担当。アルバム『Steve McQueen』制作時に加入し、1992年に脱退。
マイケル・サーモン (Michael Salmon): 初期のドラマーで、1984年1月に脱退。

ディスコグラフィー

アルバム
スウーン / Swoon (1984)
スティーヴ・マックイーン / Steve McQueen (1985)
ラングレー・パークからの挨拶状 / From Langley Park to Memphis (1988)
プロテスト・ソングス / Protest Songs (1989)
ヨルダン:ザ・カムバック / Jordan: The Comeback (1990)
アンドロメダ・ハイツ / Andromeda Heights (1997)
ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ / The Gunman and Other Stories (2001)
スティーヴ・マックイーン (レガシー・エディション) / Steve McQueen (Legacy Edition) (2007)
レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック / Let's Change the World with Music (2009)
クリムゾン/レッド / Crimson/Red (2013)

編集盤
ア・ライフ・オヴ・サプライジズ / A Life of Surprises (1992)
38 カラット・コレクション / 38 Carat Collection (1999)

シングル

Lions In My Own Garden: Exit Someone (1982) (自主制作盤)
Don't Sing (1984)
When Love Breaks Down (1984)
Faron Young (1985)
Appetite (1985)
When Love Breaks Down (1985)
Johnny Johnny (1986)
Cars and Girls (1988)
The King of Rock 'N' Roll (1988)
Hey Manhattan! (1988)
Nightingales (1988)
The Golden Calf (1989)
Looking for Atlantis (1990)
We Let The Stars Go (1990)
Jordan - The EP (1991)
The Sound of Crying (1992)
If You Don't Love Me (1992)
All The World Loves Lovers (1992)
Life of Surprises (1993)
I Remember That (1993)
A Prisoner of the Past (1997)
Electric Guitars (1997)
Where the Heart Is (1999)
Cowboy Dreams (2001)
Let There Be Music (2009)

関連人物

スティーヴィー・ワンダー
ピート・タウンゼント
トーマス・ドルビー
ステファン・リプソン

カバー

Milder PS「Quoted Out of Context」（2013）スウェーデンのジャズバンドによるカバーアルバム

参考資料

Myths, Melodies & Metaphysics: Paddy McAloon's Prefab Sprout - ISBN 978-0-9558832-0-0
『プリファブ・スプラウトの音楽 永遠のポップ・ミュージックを求めて』(2017年3月15日、DU BOOKS、渡辺亨著、ISBN 978-4-907583-97-2)

外部リンク

"Life of Surprises" in English and Spanish （英語）

プリファブ・スプラウトは、その独特な音楽性と、パディ・マクアルーンの卓越したソングライティングによって、時代を超えて多くのファンを魅了し続けています。彼らの音楽は、単なるポップミュージックの枠を超え、芸術的な深みと探求心に満ちています。

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