プリムス・ストーブ

プリムス・ストーブの魅力と伝統

プリムス・ストーブ（Primus stove）は、スウェーデン・ストックホルムで技術者フラン・リンドクヴィストによって1892年に設計された、ケロシン燃料を用いた加圧式のポータブルストーブです。リンドクヴィストは、このストーブのデザインを携帯型のブロートーチの原理を応用して開発しましたが、特許の特徴としてバーナー部が下向きから上向きに曲げられている点が挙げられます。彼は同年、ヨハン・ヴィクトル・スヴェンソンとともに新たなストーブの生産のためにJ.V.スヴェンソンケロシン・ストーブ工場を設立し、プリムスブランド名で販売を始めました。

プリムス・ストーブの人気と影響

プリムスの初代モデルであるストーブ1型の登場以降、多くの類似デザインが市場に現れ、ストックホルムに拠点を置く工具会社B.A.ヨルト（後のバーコ社）が独占販売権を得ることになります。このプリムス・ストーブはその性能と耐久性からすぐに高い評価を受け、極地探検の現場でもその名を知られるようになりました。例えば、ロアール・アムンセンの南極点探検や、リチャード・バードによる北極探検において、厳しい環境でも卓越した性能が証明されています。また、エベレスト登頂を試みたジョージ・マロリーや、その数十年後に挑戦したテンジン・ノルゲイとエドモンド・ヒラリーによる登山の際にもこのストーブが使用されました。

数あるメーカーの中で、プリムスのストーブはしばしば一般的に「プリムス・ストーブ」と呼ばれ、特に日本市場では岩谷産業との合弁会社イワタニ・プリムスのみがこの呼称を名乗ることが許されています。

ストーブの設計と構造

プリムス1型ストーブの設計には、真鍮製の燃料タンク、送油管、そしてバーナー部が含まれています。ストーブのトップリングは鋼製で、3本の脚で支えられており、従来のメーカーが作るプリムス式ストーブも基本的にこの構造を踏襲しています。1型ストーブの重さは約2.5ポンド (1.1kg)、大きさは高さ約22cm、直径は約18cmです。このタンクに最大で約2パイントのケロシンを収容でき、満タンの状態で約4時間の燃焼が可能です。

ストーブの運用に関しては、まずすすを出さない着火方法が特徴です。バーナーの下にある環状のアルコール皿に少量のアルコールを入れて点火し、これを用いてバーナー部を予熱します。その後、小型の手動ポンプを使用して燃料タンク内を加圧し、ケロシンを送油管からバーナーヘッドに送り込むことで、燃料が熱せられ気化します。気化したケロシンがバーナーから噴出し、適切な空気と混ざり合うことで、困難な環境においても青い炎を生み出しながら燃焼します。加圧を強めることで炎を大きくしたり、エアスクリューを回すことで炎を小さくすることも可能です。

このように、プリムス・ストーブは着火方式と燃焼プロセスにおいて革新的な設計を取り入れ、従来の灯心式のストーブが抱えていた煤の発生問題を解消しました。その結果、「無煤」「無灯心」のストーブと謳われ、多くの冒険者にとって欠かせない存在となりました。

総括

プリムス・ストーブがもたらした功績とその技術は、ポータブルストーブの未来にも大きな影響を与え続けています。信頼性と効率性を兼ね備えたこのストーブは、今後もキャンプや登山を愛する人々に利用され続けるでしょう。

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