プリンシペ・デ・アストゥリアス (空母)

プリンシペ・デ・アストゥリアス

プリンシペ・デ・アストゥリアス（Portaaviones Príncipe de Asturias）は、スペイン海軍に属する軽空母で、その名はスペイン王太子の称号にちなみます。本艦は、アメリカ海軍の制海艦（SCS）コンセプトをベースに設計され、225メートル超の長い船体と多様な運用能力を持っていました。

1. 来歴

スペイン海軍は1967年にアメリカからインディペンデンス級の航空母艦「カボット」を借り受け、「デダロ」として再就役。これを機に航空母艦運用をスタートしましたが、艦齢が25年を超えていたため、早急に更新が求められました。1970年代初頭、アメリカではSCSの開発が進められ、現代の護衛空母を目指した設計が模索されていました。残念ながら、議会の却下により実現せず、これを受けてスペイン海軍はSCSの設計を採用することにしました。

最初の計画では1976年に起工し、1978年に竣工する予定でしたが、さまざまな設計変更により、実際の起工は1979年、就役は1988年5月となりました。

2. 設計

本艦は、基本的にSCSの設計を踏襲しており、長船首楼型の船体やクローズド・バウの特徴が見られます。特に、艦隊旗艦としての役割を考慮し、航海艦橋の下に司令部用艦橋を追加し、指揮・統制機能が強化されています。また、動揺軽減のためのフィン・スタビライザーや、対潜戦に対応するプレーリー・マスカー・システムも装備されています。

主機関には、ゼネラル・エレクトリック LM2500のガスタービンエンジンを用いており、これは46,400馬力を誇ります。加えて、非常時用の旋回式スラスタも備え、支援をしています。

3. 能力

飛行甲板は175.3メートル×29メートルの広さを持ち、12度の勾配を持つスキージャンプを備えるなど、航空機運用も考慮された設計です。格納庫は2,300平方メートルあり、最大で37機の航空機を搭載可能ですが、実戦での運用は24機までに制限されています。平時の搭載数は17～20機とされ、特にマタドールIIやSH-3哨戒ヘリなどが使用されていました。

4. 個艦防御機能

本艦の防御は近接防空用に特化しており、比較的軽武装の設計です。ソナー装置も搭載していないため、現代軽空母としては独自の特徴を持っています。必要最低限の武装とともに、礼砲も装備されています。

5. 運用史

2013年2月6日に退役し、翌日にはナバンティア造船所へ向かいました。退役後は、強力な航空運用能力を持つ強襲揚陸艦『フアン・カルロス一世』がその役割を担うこととなります。

本艦の設計は、タイ王国海軍向けに建造された「チャクリ・ナルエベト」の基礎にもなっています。スペイン海軍の歴史において本艦は重要な位置を占めており、今後もその影響が続くことでしょう。

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