制海艦

制海艦（Sea Control Ship）

制海艦は、1960年代から1970年代にかけてアメリカ海軍が計画した小型航空母艦で、特に護衛や対潜警戒、洋上防空に対応するための艦船です。この艦は、ミッドウェイ級やフォレスタル級、キティホーク級の攻撃型空母に対して、その役割を補完することを目指して設計されました。特に、エセックス級の退役を見越した背景から、それに代わる艦船の必要性が高まりました。

背景と計画の発展

1969年、長期的な艦隊航空戦力の維持を目的として、12,000〜14,000トン級の対潜ヘリコプター駆逐艦（DHK）の計画が始まりました。この艦は、ソ連の潜水艦による静粛性の向上に対応するために、多数の哨戒ヘリコプターを使い、アクティブ・ソナーによる防御体制の強化を狙ったものです。

その後、1970年には海軍作戦部長に就任したエルモ・ズムウォルト・ジュニア大将が、すでに進行していたDHKや護衛ヘリ空母（CVHE）計画にさらなる推進を加えました。彼は、限られた国防予算の中で効率的な提案が必要であることを認識し、制海艦という「ロー・コンセプト艦」のビジョンを提示しました。この艦は、VTOL（垂直離着陸）可能な艦上戦闘機や、対潜ヘリコプターを装備することにより、限定的ながらも防空能力を持つものとして構想されました。

計画に盛り込まれた機能

1972年には、制海艦の具体的な諸元が確定しました。特に、アングルド・デッキやカタパルトを持たず、滑走路が艦首尾線に平行な設計となっていました。また、艦の中央部と飛行甲板の後部にエレベーターが配置されるなど、効率的な運用を目指した設計がなされました。

この頃、導入が進められたLAMPS（ライト・アスウィー・マーシアズ・システム）が、制海艦の任務において重要な位置を占めることになりました。SH-2D LAMPS Mk.Iは、艦船の航空艤装として使用され、洋上における航空機の整備拠点として期待されました。

発展と評価試験

1972年から1974年にかけて「グアム」を使用し、SCSの評価試験が行われました。この実験では、AV-8A攻撃機とSH-3ヘリコプターが搭載され、ズムウォルト大将によって8隻の制海艦の建造が計画されていました。

しかし、計画の進捗に対する疑問や予算削減の波が障害となり、1974年には議会によって実証艦の建造予算が削除されました。ズムウォルト大将の退任後、後任のホロウェイ大将は、より大型の艦船を推進する方針に転じ、SCS計画は次第に影をひそめていきました。

計画中止後の動向

その後、強襲揚陸艦を制海艦として利用するための研究が進められました。1981年にはタラワ級強襲揚陸艦がAV-8Aを搭載し、湾岸戦争ではAV-8Bによる実際の航空作戦が展開され、その有効性が実証されました。また、アメリカ級強襲揚陸艦ではF-35の搭載が検討されています。

一方、アメリカのSCS計画が終了する中、スペイン海軍は計画を続行し、1988年に「プリンシペ・デ・アストゥリアス」を就役させました。この艦は、SCSの設計をもとにしつつも、戦艦旗艦機能が強化されています。

このように、制海艦の概念は完全には消えませんでしたが、大型艦船へのシフトが進むことで、当初の計画は次第に忘れ去られることとなりました。

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