トアルシアン

トアルシアン期の概要

トアルシアン（英: Toarcian）は、ジュラ紀に属する地質時代の一つで、約1億8270万年前から1億7410万年前の期間を指します。この時期は、地球の環境や生物多様性に重要な影響を与えたことが知られており、その名称はフランスのポワトゥー＝シャラント地域圏に位置するトゥアールに由来します。

「トアルス階」や「トアルシアン階」という用語が使用されていますが、これらは単に地層を示す分類名であり、時代区分を示すものではありません。それぞれの階層は、層序名としての役割を持ち、「トアルス期」や「トアルシアン期」とは対を成す関係にあります。この区分についての詳細は層序学における「累代」に関する文献を参照してください。

環境の変化

トアルシアン期には、重要な環境変化が観察されます。特に、炭素循環における著しい停滞が起こり、海洋無酸素事変が発生しました。この時期に堆積した黒色泥岩からは、顕生代での最大規模の有機炭素同位体比の負異常が確認されており、地球の生態系に大きな影響を与えたことが示唆されています。

この時期はまた、パンゲア大陸が分裂し、その影響でKaroo-Ferrar火成活動が活発になった時代でもあります。この火成活動の結果として発生したメタンハイドレートの融解も、炭素循環に変動をもたらしたと考えられています。このような環境の変化は、海洋無酸素事変として知られる現象を引き起こし、これによって堆積した黒色頁岩が日本国内でも確認されています。具体的には、愛知県と岐阜県の県境付近に位置する美濃・丹波帯では、約60センチメートルもの黒色頁岩層が見つかっています。

日本におけるトアルシアンの特徴

日本国内においてもトアルシアン期の地層が確認されています。大分県東部の佐伯地域では、層状マンガン鉱床が顕著であり、ここに含まれているチャート中の放散虫化石から、後期三畳紀カーニアンおよび後期ジュラ紀のトアルシアンに堆積したことがわかっています。

さらには、新潟県蒲原山地の足尾帯に分布するジュラ紀の付加体の中で、砕屑岩が卓越している下部ユニットは、プリンスバッキアンからトアルシアンおよびアーレニアン境界に相当するものと考えられています。また、宮城県本吉郡の歌津町と志津川町には、下部ジュラ系の志津川層群が存在し、この場所からはヘッタンギアンからアーレニアンの時代に生息していたアンモナイトが発見されています。

これらの研究結果は、トアルシアン期が日本の地質学においても重要な時代であったことを示しており、さまざまな生物の進化や環境変化を理解する手がかりとなっています。

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