プリンス・セダン

プリンス・セダン（Prince Sedan）

プリンス・セダンは、たま自動車（後のプリンス自動車工業、さらに日産自動車）が1952年から1957年にかけて製造した乗用車で、その型式はAISH型です。このモデルは、日本製乗用車としては当時最大級の1,500ccエンジンを搭載し、3758台が生産されました。

背景と開発の経緯

たま自動車は、戦後の国内において電気自動車を手掛けていましたが、1950年に始まった朝鮮戦争を契機にガソリンの統制が解除され、ガソリンエンジン車の開発にシフトしました。ガソリン市場への参入を決意したたま自動車は、1952年3月に初のガソリン車を販売開始し、この車両がプリンス・セダンです。名称は、当時の皇太子明仁親王の立太子の礼にちなんでいます。

主な特徴

プリンス・セダンは、耐久性が重視され、前後固定車軸の設計を採用していました。しかし、その高級感と走行性能を維持するために、乗用車専用設計のシャーシが新たに開発されました。ボディはフルワイズタイプの3ボックス型で、コラムシフト方式により6人乗りを可能にしたのが特徴です。

エンジンは、旧中島飛行機系の富士精密工業が開発した4気筒OHV1,500ccで、このエンジンは1968年まで様々なプリンスモデルに使用されました。また、トランスミッションも革新的で、シンクロメッシュ式の変速機が採用されました。

競争力と市場への影響

当時、日産自動車では860cc・25PSのダットサンが主力で、トヨタは1000cc・27PSのトヨペットを販売していました。プリンス・セダンの1500cc・45PSという性能は、当時の競合他社を大きく上回っており、トヨタが新型エンジンの開発を急ぐきっかけとなりました。

発売後のバリエーションと派生モデル

プリンス・セダンは発売後、いくつかの改良モデルが登場しました。1953年にはAISH-II型、1954年にはAISH-III型、1955年にはAISH-IV型が発売されるなど、逐次的に改良が加えられています。また、1956年には前輪独立懸架が採用された「プリンス・セダン・スペシャル」も登場し、競争力を維持しました。

さらに、1956年にはプリンス・コマーシャルバンとプリンス・コマーシャルピックアップが発売され、乗用車をベースにした商用車としても展開されました。

技術的な課題と対策

プリンス・セダンには初期にいくつかの課題も存在し、特にコラムシフトのシャフト折れやサスペンションのゴム製ブッシュ破損が問題視されました。これらの問題解決には、たま自動車の設計スタッフが尽力し、特に桜井眞一郎氏らが重要な役割を果たしました。彼らは新しい設計によって、これらの不具合を効果的に改善することに成功しました。

まとめ

1952年から1957年までのわずかな期間に、プリンス・セダンは日本の自動車市場において重要な地位を確立しました。国産自動車史における記念碑的存在として、後のスカイラインシリーズへの道を切り開くこととなりました。プリンス・セダンは、技術的革新と挑戦を体現した歴史的なモデルの一つとして記憶されているのです。

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