プルーデンス政策

プルーデンス政策とは

プルーデンス政策とは、金融システムの安定を維持するための政策の総称です。具体的には、中央銀行が金融機関に対して「最後の貸し手」として機能したり、政府が公的資金を注入したりする措置が挙げられます。これらの政策は、金融危機を未然に防ぎ、経済全体の安定を図ることを目的としています。

プルーデンス政策の分類

プルーデンス政策は、その対象や目的によって、いくつかの種類に分類することができます。

ミクロ・プルーデンス政策: 個別の金融機関の経営状況を監視・監督し、破綻を未然に防ぐことを目的とする政策です。日本では、金融庁による検査や日本銀行による考査がこれに該当します。
マクロ・プルーデンス政策: 金融システム全体のリスク、特にシステミック・リスクに対応するための政策です。金融機関全体に対する業務規制や、自己資本比率を規制するバーゼル規制などが例として挙げられます。
事前的措置: 金融機関の経営の健全性を確保し、破綻を未然に防止するための措置です。具体的には、競争制限的規制による価格競争規制や非価格競争規制、自己資本比率規制、流動性資産比率規制、営業用不動産規制、大口融資規制、配当率規制、外国為替持高規制、金融機関の検査などが含まれます。
事後的措置: 個別金融機関の経営破綻が、金融システム全体に波及するシステミック・リスクの発生を防止するための措置です。預金保険制度、中央銀行による緊急融資、公的資金注入などが該当します。

プルーデンス政策の問題点

セーフティネットは、モラルハザードを引き起こす可能性があります。事後的な対応が強化されると、金融機関の経営者は過度なリスクを取りやすくなり、債務支払能力に問題がある場合、救済措置が単なる先延ばしになる可能性があります。また、巨大な金融機関の場合、破綻の影響が大きいため、事後的な対応が予想され、モラルハザードが発生しやすいという問題もあります。

護送船団方式からの転換

かつての日本では、金融機関を保護する「護送船団方式」と呼ばれる規制が行われていましたが、金融自由化が進むにつれて、この方式は資本主義経済になじまない部分があることが明らかになりました。そのため、金融庁が設置され、指導行政が緩和されるとともに、BIS規制（自己資本比率に関する国際統一基準）が厳格に適用されるようになり、現在のプルーデンス政策は大きく変化しています。

将来のプルーデンス政策

今後のプルーデンス政策では、以下の3つの要素が重要になると考えられます。

1. 金融機関自身の自己責任強化: 金融機関が健全な経営を維持し、リスク管理体制を強化することです。資産内容の健全性の維持、リスク管理体制の構築、内部検査体制の強化などが含まれます。
2. 金融当局の役割: 金融機関の健全性を促進するための規制や監督を強化することです。実地検査やモニタリングを通じて、金融機関の経営状況をチェックし、個別金融機関の破綻に備えたセーフティネットを構築することが求められます。
3. セーフティネットによるモラルハザードへの対処: 預金者の無関心や市場規律の欠如を防ぐための方策を講じる必要があります。また、預金者保護が金融機関保護につながる可能性があるため、金融機関の過度なリスクテイクを抑制する仕組みを検討することも重要です。

過去には、世界恐慌やS&L危機、日本の金融危機など、金融システムを脅かす事件が発生しており、これらの教訓を踏まえ、より効果的なプルーデンス政策を策定する必要があります。現在では、事後的措置である預金保険制度が、金融システムを安定させる上で重要な役割を果たしています。

これらの要素を踏まえ、金融システムの安定を維持するためのプルーデンス政策は、今後も変化と進化を続けていくと考えられます。

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