最後の貸し手

最後の貸し手とは

最後の貸し手（Lender of Last Resort）とは、金融システムにおいて、他の金融機関からの資金調達が困難になった場合に、最終的な貸し手となる存在を指します。特に、経営危機に陥った金融機関に対して、中央銀行が緊急融資を行う機能を指すことが一般的です。

この概念は、1873年の恐慌時にウォルター・バジョットが提唱した中央銀行の重要な責務の一つであり、その後イングランド銀行で不文律として採用されました。日本では、日本銀行がこの役割を担い、特別融資（日銀特融）として知られています。

目的と仕組み

最後の貸し手の主な目的は、金融機関の破綻を防ぎ、預金者を保護することです。具体的には、経営が悪化した金融機関に対して、無担保で資金を融資します。これにより、金融機関の連鎖的な破綻を防ぎ、金融システム全体の安定を維持することが期待されます。しかし、この制度は、金融機関がリスクの高い行動を取りやすくなるというモラルハザードを引き起こす可能性も指摘されています。

歴史と事例

日本

日本においては、日本銀行法第37条および第38条にその根拠が規定されており、過去に何度か発動されています。例えば、戦後の1965年には、経営危機に陥った山一證券に対し、日銀特融が実施されました。

イギリス

2007年には、サブプライムローン問題の影響で債券市場が混乱し、資金繰りが悪化したノーザン・ロックに対して、イングランド銀行が特別融資を行いました。その後、ノーザン・ロックは一時的に国有化されることとなりました。

アメリカ

2008年には、サブプライムローン問題で巨額の損失を出したベア・スターンズに対し、ニューヨーク連邦準備銀行が、JPモルガン・チェースを通じて資金供給を行いました。この事例は、日本の山一證券に対する日銀特融と類似しています。

関連用語

金融危機: 金融システム全体が機能不全に陥る状態。
取り付け騒ぎ: 金融機関の経営不安が高まり、預金者が預金を一斉に引き出す現象。
預金保険: 金融機関が破綻した場合に、預金者の預金を一定額まで保護する制度。
国際通貨基金（IMF）: 世界の金融安定と国際協力を促進する国際機関。
プルーデンス政策: 金融システムの安定を維持するための規制・監督政策。
大きすぎて潰せない（Too Big to Fail）: 破綻した場合に金融システム全体に重大な影響を与えるため、政府が救済せざるを得ない大規模金融機関を指す概念。

最後に

最後の貸し手は、金融システムの安定を維持するために不可欠な機能ですが、その運用には常にモラルハザードのリスクが伴います。そのため、適切な規制や監督のもとで、慎重に運用される必要があります。

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