プレノール

プレノール：天然香料と多様な用途

プレノールは、3-メチル-2-ブテン-1-オールというIUPAC名を持つ天然アルコールです。無色透明で、柑橘系の爽やかな香りを持ち、香水などの香料として利用されています。水への溶解度は中程度ですが、多くの有機溶媒には容易に溶解します。

天然での存在と工業生産

プレノールは、柑橘類、ベリー類（クランベリー、コケモモ、スグリ、ラズベリー、ブラックベリー）、ブドウ、トマト、ホップ、コーヒーなど、様々な植物に含まれています。また、精白パンやキイチゴ、クラウドベリー、パッションフルーツにも含まれることが確認されています。

工業的には、ドイツのBASF社や日本のクラレなどによって、医薬品や香料の原料として大量生産されています。2001年の世界生産量は6,000トンから13,000トンと推定されています。工業生産においては、ホルムアルデヒドとイソブテンを反応させ、生成されたイソプレノールを異性化することでプレノールが得られます。

ポリプレノール：細胞機能における重要性

プレノールは、イソプレノイドアルコールという化合物の構成単位となります。イソプレノイドアルコールは、イソプレンというC5H8単位が繰り返し結合した構造を持ち、プレノール自身も最も単純なイソプレノイドアルコールの一つです。イソプレノイドアルコールは、ゲラニオール、ファルネソール、ゲラニルゲラニオールなど、鎖の長さが異なる様々な化合物が存在します。

プレノールが複数結合してできる重合体をポリプレノールと呼びます。ポリプレノールは、通常100単位程度まで鎖長が伸びることがあります。これらの長鎖イソプレノイドアルコールは「テルペノール」とも呼ばれ、タンパク質、カロテノイド、ビタミンA、E、Kなどの脂溶性ビタミンのアシル化（脂肪酸と結合すること）に重要な役割を果たします。

ポリプレノールは、細胞膜の維持、細胞内タンパク質の安定化、免疫系の機能維持など、細胞レベルでの様々な生理機能に関与しています。特に、多糖の合成において糖を運搬する役割を担うドリコールは、ポリプレノールの代謝産物です。

ポリプレノールの薬理作用は、慢性炎症や腫瘍などで減少するドリコールを補う効果に起因すると考えられています。生きた針葉樹の葉は、ポリプレノールを豊富に含むため、重要な供給源となっています。

まとめ

プレノールは、その心地よい香りから香料としてだけでなく、ポリプレノールという形で細胞機能にも重要な役割を果たす多様な化合物です。天然での存在と工業生産、そしてポリプレノールの生理機能に関する研究は、今後も継続して行われるでしょう。

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