プロキシマ・ケンタウリd

プロキシマ・ケンタウリd：太陽系に最も近い惑星の一つ

プロキシマ・ケンタウリd（Proxima Centauri d）は、地球からケンタウルス座の方向に約4.2光年という、太陽系外で最も近い恒星の一つであるプロキシマ・ケンタウリの周りを公転する惑星です。この惑星は、プロキシマ・ケンタウリb、プロキシマ・ケンタウリcに続いて発見された、この恒星系で3番目の惑星となります。

発見の経緯

プロキシマ・ケンタウリの惑星系は、近年、その複雑な構造が明らかになってきています。プロキシマ・ケンタウリbは2016年に、プロキシマ・ケンタウリcは2019年にそれぞれ発見されました。プロキシマ・ケンタウリdの発見は、2020年5月にヨーロッパ南天天文台（ESO）の超大型望遠鏡VLTに搭載されたESPRESSO分光器による観測がきっかけでした。この観測で、プロキシマ・ケンタウリの視線速度にわずかな変動が検出されました。この変動は、振幅がわずか40cm/sという微小なもので、当初はその原因がはっきりしませんでした。しかし、その後の分析によって、この変動が惑星による信号である可能性が示唆されました。

もしこの信号が惑星によるものであれば、その惑星の下限質量は地球の0.29 ± 0.08倍となります。この惑星候補はプロキシマ・ケンタウリdと名付けられました。赤色矮星の周りには複数の惑星が存在することが多く、この発見自体は驚くべきことではありませんでした。約2年後の2022年2月、ヨーロッパ南天天文台は、VLTによる追加観測によって、この惑星候補プロキシマ・ケンタウリdの存在を正式に確認し、その研究論文を公表しました。

特性

プロキシマ・ケンタウリdは、火星や水星に近い下限質量0.26 M⊕しか持たず、ドップラー分光法（視線速度法）によって発見された系外惑星の中では、最も質量の小さい惑星の一つです。その質量は地球の約4分の1に過ぎず、非常に軽量な惑星です。

プロキシマ・ケンタウリdは、主星の手前を通過する現象（トランジット）は観測されていません。主星の半径が小さいため、トランジットを起こす確率は最大でも2%程度と推定されています。

この惑星は、主星から約0.029天文単位（約430万km）という非常に近い距離を公転しており、その公転周期はわずか約5.15日です。主星からの距離は非常に近いですが、プロキシマ・ケンタウリは赤色矮星であるため、惑星の表面温度はそれほど高くはないと考えられています。ボンドアルベドを0.3と仮定した場合、表面の平衡温度（大気の影響を無視した温度）は360K（約87℃）と計算され、地球上において水が液体で存在できる温度範囲に入ります。

惑星の半径はまだ正確にはわかっていませんが、惑星や主星の特性を用いたモデル計算では、地球の0.81倍程度と推定されています。

まとめ

プロキシマ・ケンタウリdは、その小さな質量、短い公転周期、そして比較的穏やかな表面温度から、今後の研究でさらに詳細な情報が明らかになることが期待される惑星です。特に、生命が存在する可能性についても、さらなる研究が待たれます。

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