プロクレース

プロクレース（Προκλῆς）

プロクレースは、古代ギリシアにおける主要な都市国家の一つ、スパルタの歴史と神話において重要な地位を占める人物です。彼の在位時期は紀元前930年頃とされており、スパルタを支配した二つの王家の一つ、エウリュポーン朝の創始者として知られています。彼の名は長母音を省略してプロクレスと表記されることもあります。

プロクレースは、ギリシア最大の英雄とされるヘーラクレースから数えて六世代後の子孫にあたります。彼はアリストデーモスとアルゲイアーの子として生まれ、エウリュステネースという名の双子の兄弟を持っていました。古代の伝承によれば、アリストデーモスはドーリア人のペロポネソス半島への進出（ヘラクレイダイの帰還とも称される）に関わった人物ですが、幼い双子を残して早世してしまいました。そのため、プロクレースとエウリュステネースは、母アルゲイアーの兄弟であるテーラースの後見のもとで育てられることとなります。テーラースは双子が成人するまで彼らの保護者としての役割を果たしました。

成人を迎えたプロクレースとエウリュステネースは、古代ギリシア世界で絶大な権威を持っていたデルポイのアポローン神託所に伺いを立てました。神託は、彼らが共にスパルタの王位に就くべしと告げたとされています。これに従い、プロクレースとエウリュステネースは共同でスパルタの王として君臨することになりました。彼らはスパルタの歴史における最初の共同統治者となったのです。

しかし、この双子の王は互いに相容れず、その関係は終始険悪であったと伝えられています。兄弟間の激しい対立は、単なる個人的な不和にとどまらず、スパルタの政治体制に決定的な影響を与えました。彼らの治世以降、スパルタでは代々、この二人の王の家系からそれぞれ一人が選出され、同時に二人の王が統治するという独特の二王制が確立されることになったのです。プロクレースはエウリュポーン朝の、そしてエウリュステネースはアギス朝の始祖と見なされ、この二つの王家がスパルタの国政を司る柱となりました。

プロクレースの王位は、息子のソオスによって引き継がれました。プロクレース自身に関する記録は多くありませんが、彼の存在はスパルタのユニークな政治システム、すなわち二人の王による共同統治体制が成立する上での、神話的かつ歴史的な起点として極めて重要視されています。彼の物語は、古代スパルタがどのようにしてその特異な統治形態を持つに至ったのかを理解する上で欠かせない要素となっています。

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