プログレスM-12

プログレスM-12

プログレスM-12は、1992年にロシア連邦宇宙局によって運用された無人宇宙補給機であり、当時軌道上にあった宇宙ステーション「ミール」への物資輸送を主任務とするプログレス補給船シリーズの一機です。ミールステーションへの補給任務は多数実施されましたが、プログレスM-12はその全64回のプログレスフライトのうち、ちょうど30番目に位置するミッションでした。本機は、プログレス-M型（正式な形式名は11F615A55）として製造された機体のうち、シリアル番号213番に相当します。

この補給機の内部には、宇宙での長期滞在を支えるために不可欠な多岐にわたる物資が搭載されていました。具体的には、当時ミールに滞在していたミールEO-11クルーが必要とする、食料、飲料水、そして呼吸に必要な酸素といった生命維持のための物資が積まれていました。これらに加えて、宇宙空間での各種科学実験や研究活動に用いられる重要な機器や消耗品も運ばれました。さらに、ミール宇宙ステーションの軌道を維持したり、姿勢を制御したりするための推進剤（燃料）も大量に搭載されており、ステーションの安定した運用に貢献する重要な役割を担っていました。

プログレスM-12のミッションは、1992年4月19日に始まりました。グリニッジ標準時（GMT）で同日21時29分25秒、カザフスタン共和国に位置するバイコヌール宇宙基地の1番射点5番発射台から、ソユーズ-U2ロケットの推進力によって宇宙へと打ち上げられました。地球低軌道に到達した後、プログレスM-12は約2日間の自動飛行期間を経て、宇宙ステーション・ミールへの接近軌道に乗りました。

打ち上げから正確に2日後の同年4月21日23時21分59秒（GMT）、プログレスM-12はミール宇宙ステーションのコアモジュール（基本機能を持つ主要部）の前面に設けられたドッキングポートへの自動ドッキングに成功しました。これにより、物資の移送や、機体に搭載された燃料を用いたミールの軌道修正などが可能となりました。

プログレスM-12は、ミール宇宙ステーションと合計で67日間にわたり結合した状態にありました。この結合期間中、プログレスM-12はステーションの軌道制御を担当し、ミールは高度約371キロメートルから415キロメートルの範囲で、およそ51.6度の軌道傾斜角を保ちながら地球周回軌道を飛行しました。プログレス補給船は、物資を届けるだけでなく、ステーションの寿命を維持するために不可欠な軌道高度の維持に貢献する機能も有しています。

ミールでの補給任務を終えたプログレスM-12は、1992年6月27日21時34分44秒（GMT）に、ミールから分離されました。分離後、軌道離脱のための最後の噴射が行われ、地球の大気圏へと再突入する軌道に乗せられました。ドッキング解除から数時間後の翌日、同年6月28日0時2分51秒頃（GMT）、プログレスM-12は地球大気圏に突入し、その際に発生する激しい摩擦熱によって機体の大部分が燃え尽きました。残ったわずかな破片は、安全を確保するため、船舶の航行などが少ない南太平洋上の予定された海域に落下しました。

このように、プログレスM-12は1992年の約2ヶ月間にわたる任務期間を通じて、ミール宇宙ステーションの運用維持とクルーの生命を支える上で、重要な役割を果たした無人補給ミッションでした。

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