プログレスM-35

プログレスM-35

プログレスM-35は、ロシア連邦宇宙局によって1997年に運用された無人宇宙補給船です。その主要な目的は、当時地球周回軌道上にあった宇宙ステーション「ミール」への物資輸送でした。この船はプログレス補給船シリーズの一つで、シリアル番号235が与えられています。

搭載貨物と背景

M-35の運用において特筆すべきは、先行機であるプログレスM-34がミールとのドッキング訓練中に衝突事故を起こし、ステーションの一部、特にスペクトルモジュールに損傷を与え、減圧状態に陥らせた直後に打ち上げられたという背景です。そのため、プログレスM-35には通常の補給品に加え、この事故によって生じた損傷箇所の修理や機能回復に必要な物品が多く搭載されていました。

輸送された貨物の総重量は2425.3kgに及び、その内容は多岐にわたりました。具体的には、ステーションの運用に不可欠な燃料や酸素混合物をはじめ、乗員の安全と健康を守るための個人保護用品、劣化した機器の交換用ユニット、各種科学実験に必要な装置、船内の照明を強化するための追加装置などが含まれていました。さらに、宇宙ステーション外部での活動（宇宙遊泳）を行うための装具や、ドッキング機構を支援する装置（гермоплату）、スペクトルモジュール修理に特化したアダプタケーブルといった、M-34の事故対応に直結する専門的な部品も積まれていました。

また、事故によってスペクトルモジュールに取り残され、回収が困難となった宇宙飛行士マイケル・フォール氏の個人用品に代わるものとして、約70kgに及ぶアメリカ製の装置類も特別に搭載されていました。これらの搭載物は、単なる日常的な補給にとどまらず、ミールの危機的な状況を乗り越えるための重要な支援物資であったと言えます。

運用経過

プログレスM-35は、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から、1997年7月5日協定世界時（UTC）4時11分54秒に打ち上げられました。

地球周回軌道投入後、M-35は順調に飛行を続け、打ち上げから2日後の7月7日UTC 5時59分24秒に、自動操縦システムを用いて宇宙ステーション「ミール」のクバント1モジュールへのドッキングを成功させました。

ミールとの結合状態は約1ヶ月間維持されましたが、同年8月6日UTC 11時46分40秒に一度目のドッキング解除が行われました。その後、M-35はミールの近傍で待機し、8月18日UTC 12時52分46秒に、今度は地上からの遠隔操作によって再びクバント1モジュールへの再ドッキングを実施しました。この再ドッキングの目的は、ステーション側のドッキングポートの確認や、あるいは軌道変更マヌーバの実施のためだったと考えられます。

プログレスM-35は、約2ヶ月半にわたるミールへの補給と支援の任務を終え、10月7日UTC 12時3分47秒にミールから最終的なドッキング解除を行いました。ステーションを離れた後、M-35は単独での軌道飛行に移り、その後、地球の大気圏に再突入して燃え尽きるプロセスに入りました。燃え残りは、モスクワ時間20時23分頃、南緯41度8分、西経171度5分の太平洋上へ計画通りに落下しました。これにより、プログレスM-35の全運用が完了しました。

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