プログレスM-64

プログレスM-64は、国際宇宙ステーション（ISS）へ物資を輸送するためにロシア連邦が運用した無人宇宙補給船である。この機体は、プログレス補給船の改良型であるプログレス-M型（形式番号11F615A55）として製造され、シリアル番号は364であった。NASAにおいては、Progress 29あるいは29Pという呼称が用いられた。

本機は、2008年5月14日20時22分に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1/5発射台から、ソユーズ-Uロケットによって宇宙へ打ち上げられた。

ISSへのドッキングは、打ち上げから約2日後の2008年5月16日21時39分に実行された。ドッキング先は、ISSの初期モジュールであるザーリャモジュールに設けられたナディアポートである。本来の予定時刻よりも約2分遅れての接続となったが、これはクルス自動ドッキングシステムに起因する軽微な影響によるものだった。

プログレスM-64には、ISS長期滞在クルーの生活と活動を支えるため、合計約2112kgに及ぶ多種多様な補給品が搭載されていた。主要な積荷の一つであるドライカーゴは、約1292kgを占めた。これには、宇宙での食料品や様々な種類の科学研究用実験装置が含まれていたほか、ISS第17次長期滞在クルーの一員であったロシア人宇宙飛行士セルゲイ・アレクサンドロヴィチ・ヴォルコフが使用するソコルKV-2宇宙服の交換用部品なども積まれていた。さらに、将来ISSにロシアのミニ・リサーチ・モジュール2（MRM-2）が取り付けられる際に使用するための、ズヴェズダモジュールに設置されるドッキングターゲットといった重要な機器も輸送された。

これらの固形貨物に加え、ISSの軌道維持に使用される推進剤約1230kg、クルーが呼吸するための酸素約29kgと船内の環境を調整するための空気約21kg、そして生活用水として使用される水約420kgといった液体・気体貨物も搭載されていた。

ISSへのドッキング期間を終え、プログレスM-64は2008年9月1日19時46分にISSから分離された。補給船の運用はここで終了せず、分離後約1週間にわたり、「プラズマ・プログレス計画」と名付けられた自由飛行実験ミッションに使用された。これは、ISS近傍の宇宙環境に関する科学的なデータを取得することを目的とした実験である。

全ての任務を終えたプログレスM-64は、2008年9月8日に地球周回軌道からの離脱を開始した。当初の計画では、20時47分頃に太平洋上空の大気圏に再突入し、その大部分が燃え尽きて消滅する予定であった。しかし、実際には機体の一部が完全に燃え尽きず、同年同日の21時33分に太平洋上に落下したことが確認されている。これにより、プログレスM-64の全ミッションは完了した。

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