プログレスM-UM

プログレスM-UM（ロシア語: Прогресс М-УМ）は、国際宇宙ステーション（ISS）のロシア軌道セグメントへ新しい結合モジュール「プリチャル」を輸送するために、既存のプログレス-M補給船を特別に改造した無人宇宙船です。ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスによって運用されました。この機体はプログレス-M補給船の製造番号303にあたり、形式名は11F615A55とされています。通常のプログレス補給船が貨物をISSへ運ぶのに対し、プログレスM-UMはその主目的であるプリチャル・モジュールを輸送するため、加圧貨物モジュール部分が取り外され、推進セクションにプリチャルが取り付けられるという特殊な構成を持っていました。このミッションは、プログレス補給船シリーズ全体としては171回目の飛行にあたります。また、プログレスMシリーズとしてはこれが最後のフライトであり、さらにプログレス宇宙船がソユーズ2.1bロケットを使用して打ち上げられた初めての事例でもありました。

開発経緯

プログレスM-UMの開発は、ISSのロシア軌道セグメント拡張計画の一環として進められました。2011年1月15日、ロケット・宇宙公社エネルギア（RKKエネルギア）は、将来の結合モジュールとその関連ハードウェアに関する予備設計が科学技術評議会で承認されたと発表しました。この承認された設計の中には、プリチャル・モジュールを輸送するための専用輸送船としてプログレス輸送船を改造したプログレスM-UM、そのためのペイロードセクション（KGCh）、そしてプログレスM-UMとプリチャルに適合させるためのソユーズ打ち上げ機の改造が含まれていました。

設計作業を経て、プログレスM-UMの最終的な設計は2014年に完成し、署名されました。その後、実際に打ち上げられる2021年まで倉庫に保管されていました。打ち上げに先立ち、プリチャル・モジュールへの最終的な取り付け作業や処理が行われました。プログレスM-UMは、新しく開発された移送コンパートメントを介してプリチャル・モジュールと結合されました。

プログレスM-UMのような特殊な輸送ミッションは過去にも例があり、2001年にISSのピアース・ドッキング室（後に廃棄）を輸送したプログレスDC-1や、2009年にポイスク・モジュールを輸送したプログレスM-MIM2などに類似しています。しかし、プログレスM-UMの航法システムやアビオニクス（航空電子機器）ハードウェアは、より新型のプログレスMS型から流用されており、最新の技術が導入されていました。

打ち上げ

プログレスM-UMに搭載されたプリチャル・モジュールは、2021年11月24日13時06分35秒（協定世界時）に、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の31/6番射点から、ソユーズ2.1bロケットによって国際宇宙ステーションへ向けて打ち上げられました。プリチャル・モジュールの直径が比較的大きかったため、プログレスM-UMは直径4.1メートルのST型フェアリングに格納されて打ち上げられました。これは、標準的なプログレス補給船が使用するフェアリングよりも大きなものです。

ISSとのドッキング

打ち上げから約2日後の2021年11月26日、プログレスM-UMは自動操縦で国際宇宙ステーションへのドッキングを行いました。ドッキング先は、ISSロシア軌道セグメントの一部である多目的実験モジュール「ナウカ」の天底側（地球側）に位置するドッキングポートです。このドッキングに先立ち、別のプログレス補給船であるプログレスMS-17が、ナウカのこのポートに一時的に接続されていた既存のドッキングアダプターを取り外し、ポートを解放する作業を行いました。プログレスM-UMとプリチャルは無事にナウカへのドッキングを完了しました。

プリチャル・モジュールとロシア軌道セグメントの拡張

プログレスM-UMによってISSに届けられたプリチャル・モジュールは、2021年中にロシア軌道セグメントに追加された2つ目のモジュールとなりました。これ以前には、同じくプログレス補給船で輸送されたナウカ・モジュールが結合されています。プリチャル・モジュールの到着により、ロシア軌道セグメントの機能が大幅に拡張されました。

プリチャル・モジュールには、ナウカ多目的実験モジュールとの結合に使用されるアクティブ・ハイブリッド・ドッキングポートが1つ装備されています。残りの5つのポートは、ソユーズ宇宙船やプログレス補給船といった既存のロシア製宇宙機に加え、将来的にドッキングシステムが変更される可能性のあるより大型のモジュールや新型宇宙船とも結合できるよう設計されたパッシブ・ハイブリッド・ポートとなっています。これにより、ロシア軌道セグメントの拡張性や運用柔軟性が向上しました。

プリチャル・モジュールやナウカを含むロシア軌道セグメントの新しい構成要素を完全に統合するため、ISS搭乗員による複数回の船外活動が計画・実行されました。特に、プリチャル・モジュール到着後には2021年第4四半期に船外活動が行われ、2022年を通じてさらに6回の船外活動が実施されることで、新しいモジュール群の電気系統や配管、構造的な接続の完了が目指されました。

プリチャル・モジュールの打ち上げ計画は当初、2020年夏末にロスコスモスによって起草されたISSフライトマニフェストでは2021年9月6日とされていましたが、ナウカの打ち上げ遅延などの影響を受け、2020年12月1日にはナウカ打ち上げの3～4ヶ月後に変更されました。最終的に打ち上げ日は2021年11月24日に決定され、実行されました。

ミッションの完了

プログレスM-UMは、プリチャル・モジュールをISSに届け、所定のミッションを完了しました。推進セクションはISSに約26日間ドッキングした状態に留まりました。これは、プリチャル・モジュールの天底側ドッキングポートを、将来的に別のロシア宇宙船が使用できるよう解放するための措置でした。

ISSから分離されたプログレスM-UMの推進セクションは、軌道上を約28日15時間飛行した後、2021年12月23日04時30分54秒（協定世界時）に地球大気圏に再突入しました。大気圏通過中に機体は分解し、その残骸の大部分は南太平洋上の予定された海域に落下しました。

プログレスM-UMは、ISSへの重要なモジュール輸送という特殊な役割を果たし、プログレス補給船シリーズの歴史に新たな一頁を加え、特にプログレスM型の最後の飛行という節目を飾りました。そのミッションは、ISSロシア軌道セグメントの今後の運用と拡張にとって不可欠なものでした。

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