ヘルメット (紋章学)

紋章学におけるヘルメット（ヘルム）

紋章学において、ヘルメット（またはヘルム）は、エスカッシャンの上に配置され、リースとクレストを戴く兜を模した重要な構成要素です。

歴史

ヘルメットが紋章に描かれるようになったのは12世紀頃からです。初期には、バレル・ヘルメットと呼ばれる樽型のヘルメットが用いられました。この形式は15世紀から16世紀頃まで使われ続けましたが、細長い覗き穴のために視界が悪く、紋章の色が限定的で鮮明な色彩ばかりであった一因とされています。

17世紀頃からは、バー・ヘルメットやバイザー・ヘルメットが主流となり、そのスタイルが爵位や社会的地位によって異なるようになりました。これらのスタイルは、実際の軍用兜の発展とともに進化しましたが、紋章記述の中には特に記述されず、階級に応じて自然に描かれるべきものとされました。

スタイル

爵位のない貴族や市民は一般に閉じたヘルメットを、高位の貴族はバイザーの開いたヘルメットやバー・ヘルメットを用いるのが通例でした。これらの分類は比較的固定されていましたが、ヘルメットの形状自体は時代とともに変化しました。紋章のヘルメットの進化は、中世の戦闘技術やトーナメントの進化と連動していました。バー・ヘルメットやオープン・フェイス・ヘルメットで階級を示す習慣は、紋章学の実践が確立された後の1615年頃に現れました。

ランスを用いたジョウスト（馬上槍試合）がメイスを用いたトゥルネイ（団体戦）に取って代わられるにつれて、顔を保護するために視野を広げた前面が開いたヘルメットが用いられるようになりました。ジョウストのヘルメットは誰でも自由に使うことができましたが、バー・ヘルメットは貴族や特定の法律学者、神学者に限定されました。ヘルメットの向きや格子のバーの数も重要視されましたが、これは限られた期間の習慣でした。バイザーを上げて正面を向いている金のヘルメットは、プロイセン王によって国王の冠を戴く王のヘルメットとして採用されました。教会の紋章学においては、司教や聖職者はヘルメットの代わりにミトラや教会の帽子を用いました。

ヘルメットの数

ドイツや北欧の紋章学では、複数のヘルメットが紋章に使用されることがあり、それぞれが所有者の支配権を表す封土を示します。これらの地域では、ヘルメットとクレストは紋章に不可欠な要素と考えられています。イングランドの紋章学では、複数のクレストを描く場合、クレストはヘルメットから切り離され、一つのヘルメットの上に描かれますが、ドイツの紋章学では、クレストは常に各々が自身のヘルメットと一体化しており、分離できないものとして扱われます。大陸ヨーロッパでは、複数のヘルメットは通常内側へ向けられ、奇数の場合は中央のヘルメットが正面を向きます。一方、スカンジナビアの紋章学ではヘルメットは通常外側へ向けられます。

最後のブランデンブルク＝アンスバッハ辺境伯の紋章は、記録的な13のヘルメットとクレストで飾られた21分割のエスカッシャンで構成されていました。

まとめ

ヘルメットは紋章学において、単なる装飾ではなく、所有者の地位や権威を示す重要な要素です。その形状や配置は、時代や地域によって異なり、紋章学の奥深さを物語っています。

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