ヘレスポントスの戦い

ヘレスポントスの戦い

ヘレスポントスの戦いは、小アジア北西部のヘレスポントス近郊で行われたディアドコイ戦争の重要な戦闘です。この戦闘では、エウメネスがクラテロスとネオプトレモスの連合軍を相手に勝利を収め、両者を打ち破りました。

背景

紀元前323年、アレクサンドロス3世の死去により、帝国は混乱に陥りました。彼の家臣であるペルディッカスが摂政となり、権力を掌握しましたが、これに対抗する形でアンティパトロスやクラテロスなどのマケドニアの武将たちは、彼に対抗する同盟を結成します。ペルディッカスはその一環として、エジプトに向かいプトレマイオスの討伐を試みました。この際、エウメネスもまたペルディッカスの支持者として対立派の標的となりました。

エウメネスとクラテロスの間には複雑な関係がありました。クラテロスは高名なマケドニアの将軍であり、エウメネスにとっては強力な敵でした。エウメネスは、クラテロスの名声により自軍の兵が裏切るのではないかと警戒しました。困難を乗り越えるために、エウメネスはクラテロスの存在を隠し、実際の敵はネオプトレモスだけであると指揮をとることにしました。

戦闘の様子

エウメネスは、自らの軍を戦略的に配置しました。クラテロスの右翼に対抗するために、ファルナバゾスとフォイニクスが指揮する外国人騎兵部隊を配備します。エウメネスは、敵の指揮官が何も言う暇を与えずに攻撃をさせるよう命じました。自身は騎兵2000を率いて右翼に配置し、ネオプトレモスとの対峙に備えました。

戦闘は激化し、エウメネスが率いる騎兵が突撃をかけ、その後、エウメネス軍左翼も続きました。クラテロスはエウメネスに対抗し、戦いが両軍にとっての激闘となります。結果として、エウメネスは一騎討ちでネオプトレモスを討ち取ります。ネオプトレモスが戦死すると、彼の部隊は混乱し、中央の歩兵は逃走します。一方、クラテロスは戦いに奮戦しましたが、落馬し、そのまま命を落としました。

エウメネスは、敵の降伏勧告を行い、連合軍の中央部隊は降伏しました。これにより、エウメネスは勝利を収めましたが、捕虜となった歩兵は食料調達を名目に脱走するなど、混乱が続きました。

戦後の展開

エウメネスは勝利を収めたものの、ペルディッカスは戦いの数日前に自らの将軍たちによって殺害されていました。このため、エウメネスは孤立し、クラテロスの死によってマケドニア人の敵意がかえって強まる結果となります。その後、トリパラディソスの軍会で他のペルディッカス派の将軍たちと共に死を言い渡されることになります。そして、エウメネスはかつての盟友アンティゴノスと戦う命を受けることになるのです。

この戦いはエウメネスの軍事的才能を示す重要な出来事であり、同時に彼の運命の転換点ともなったのです。

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