ヘンリー・フィップス (初代マルグレイヴ伯爵)

初代マルグレイヴ伯爵ヘンリー・フィップス

初代マルグレイヴ伯爵ヘンリー・フィップス（Henry Phipps, 1st Earl of Mulgrave, 1755年2月14日 - 1831年4月7日）は、イギリスの貴族、軍人、政治家として、激動の時代を生きました。バス勲章ナイト・グランド・クロス勲爵士（GCB）や枢密顧問官（PC）といった栄誉に浴し、最終階級は陸軍大将にまで昇りつめました。

政治家としての活躍

ヘンリー・フィップスは、ウィリアム・ピット（小ピット）の下で外務大臣を務め、その政治手腕を発揮しました。小ピット没後のトーリー党政権下でも閣僚として重用され、政界で確固たる地位を築きました。1792年には第3代マルグレイヴ男爵を襲爵し、1812年には初代マルグレイヴ伯爵に叙せられました。

生涯

初代マルグレイヴ男爵コンスタンティン・フィップスの三男として生まれたヘンリー・フィップスは、幼少期からエリート教育を受けました。1775年に軍に入隊し、アメリカ独立戦争では西インド諸島へ従軍するなど、軍人としてのキャリアをスタートさせます。その後も順調に昇進を重ね、1809年には大将にまで上り詰めました。

政界では、1784年から庶民院議員を務め、小ピットの政策を支持しました。1794年に貴族院へ移り、1804年にはランカスター公領大臣として初入閣。翌年には外務大臣に転じ、第三次対仏大同盟の結成に貢献しました。小ピットの死後、一時下野しますが、後に海軍大臣として再入閣し、イギリス海軍の作戦を指揮しました。

1810年に海軍大臣を辞任後は、兵站総監として内閣に留まり、1819年に兵站総監を辞任、1820年に政界から引退するまで、長きにわたり政治の世界で活躍しました。1831年、ヨークシャーの自邸で生涯を閉じました。

人物と評価

ヘンリー・フィップスは、卓越した才能を持ちながらも、その業績は必ずしも広く知られているとは言えません。しかし、政治家としても軍人としても優れた能力を発揮し、同時代の人々からも高く評価されていました。画家・作家のベンジャミン・ヘイドンは、マルグレイヴがウェルズリーの才能をいち早く見抜き、「彼は第2のマールバラになるだろう」と予測したことを記録しています。

家族

1795年にマーサ・ソフィア・メイリングと結婚し、四男五女をもうけました。そのうち、長男は第2代マルグレイヴ伯爵、初代ノーマンビー侯爵となり、王璽尚書やアイルランド総督、陸軍・植民地大臣を歴任しました。次男は陸軍大佐となり、国王手許金会計長官を務めました。

ヘンリー・フィップスは、激動の時代を駆け抜けた政治家、軍人であり、その生涯はイギリスの歴史に深く刻まれています。

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