ヘンリー八世の私生活

映画『ヘンリー八世の私生活』について

『ヘンリー八世の私生活』（原題：The Private Life of Henry VIII）は、1933年に公開されたイギリス映画で、アレクサンダー・コルダが監督・製作を務めました。この作品は、イギリス映画史において非常に重要な位置を占めており、「イギリス映画の歴史は『ヘンリー八世の私生活』以前と以後で分けられる」とまで言われるほどです。

物語は、イングランド王ヘンリー8世の結婚生活に焦点を当て、彼の複雑な人間関係や宮廷内の権力闘争を描いています。チャールズ・ロートンがヘンリー8世を演じ、その迫真の演技は高い評価を受けました。共演には、マール・オベロン、エルザ・ランチェスター、ロバート・ドーナットなどが名を連ねています。

制作の背景

監督のアレクサンダー・コルダはハンガリー出身で、オーストリア、ドイツ、アメリカ、フランスを経て、1931年にイギリスに渡りました。1933年には自身の製作会社であるロンドン・フィルム・プロダクションズを設立し、本作を製作しました。ロンドン・フィルムはアメリカのユナイテッド・アーティスツの株を保有していたため、世界配給において有利な立場にありました。

作品の評価と受賞

『ヘンリー八世の私生活』は、それまで不振だったイギリス映画界に大きな転機をもたらしました。1933年10月12日には、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールで華々しくプレミア上映が行われ、興行的にも大成功を収めました。アメリカ国内での年間興行成績は12位にランクインしました。

また、第6回アカデミー賞では、作品賞と主演男優賞（チャールズ・ロートン）にノミネートされ、ロートンは見事に主演男優賞を獲得しました。ロートンの演技は観客を魅了し、『フィルム・ウィークリー』誌の読者投票でその年のイギリス映画最高の男優に選ばれるほどでした。

日本での公開

日本では、戦前の天皇制絶対の時代であったため、国王を粗野で好色な人物として描いた本作の公開は、天皇の尊厳を損なう恐れがあるとして、内務省の検閲で差し止められ、公開されることはありませんでした。

主なキャスト

ヘンリー8世：チャールズ・ロートン
アン・ブーリン：マール・オベロン
ジェーン・シーモア：ウェンディ・バリー
アン・オブ・クレーヴズ：エルザ・ランチェスター
キャサリン・ハワード：ビニー・バーンズ
キャサリン・パー：エヴァリー・グレッグ
トマス・カルペパー：ロバート・ドーナット
トマス・クロムウェル：フランクリン・ダイヤル

映画が与えた影響

『ヘンリー八世の私生活』は、その斬新な映像表現と歴史上の人物を大胆に描いたことで、当時の映画界に大きな影響を与えました。特に、チャールズ・ロートンのヘンリー8世役は、映画史に残る名演として知られています。

この作品の成功は、イギリス映画が国際的に認知されるきっかけとなり、後の映画製作に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

ヘンリー八世の私生活 - allcinema
The Private Life of Henry VIII - IMDb（英語）
The Private Life of Henry VIII - オールムービー（英語）
The Private Life of Henry VIII - TCM Movie Database（英語）
* The Private Life of Henry VIII review at Old Movies

この映画は、歴史に名を残す人物の人間性を深く掘り下げた作品であり、今見ても多くの人々を魅了する力を持っています。

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