ベインブリッジアイランド (ワシントン州)

ベインブリッジアイランドは、アメリカ合衆国ワシントン州キットサップ郡にある都市です。ピュージェット湾に浮かぶ同名の島全体をその市域とし、2020年の統計によると人口は24,825人です。シアトルからは湾を挟んで西側に位置しており、州営フェリーを利用すれば約35分でアクセスできます。

地理

北緯47度39分19秒、西経122度32分6秒に位置するこの島は、総面積が約170平方キロメートルにおよびます。そのうち陸地は約71.5平方キロメートル、水域は約98.2平方キロメートルと、総面積の57%以上を水域が占めています。シアトルとはワシントン州営フェリーで結ばれており、日々の交通手段としても重要な役割を果たしています。

歴史

島の歴史は、1792年にイギリス海軍のジョージ・バンクーバーが探検に訪れたことに始まります。軍艦「ディスカバリー」で北米西岸を探検していたバンクーバーは、島の南端に数日間投錨し、周辺水域を調査しました。当時の地図にはAgate Passageが描かれなかったため、ベインブリッジ島は半島のように記されています。バンクーバーは、この投錨地を王政復古を記念してリストレーション・ポイントと名付けました。1841年になると、アメリカ海軍のチャールズ・ウィルクス大尉がこの島を訪れ、米英戦争の英雄であるウィリアム・ベインブリッジにちなんで「ベインブリッジ島」と命名しました。

その後、ベインブリッジ島は製材業と造船業の中心地として発展します。特に島で産出されるスギやヒノキといった木材は、その品質とアクセスの良さから、船舶のマスト材として高く評価されました。キットサップ郡の郡庁が当初、島北端のポート・マディソンに置かれていたことからも、その重要性がうかがえます。

製材業や造船業を支えるため、島には多くの移民が移り住みました。日本人（日系人）、イタリア人、ハワイ人などが代表的で、特に日本人移民（一世）は1883年には島に定住しています。第二次世界大戦中には、島はアメリカ史における悲劇の舞台の一つとなります。1942年2月、ルーズベルト大統領による大統領行政命令9066号に基づき、ベインブリッジ島の日系アメリカ人はわずか48時間以内の立ち退きを命じられ、全米で最初に強制立ち退き・強制収容の対象となった集団の一つとなりました。彼らは裁判や公聴会を経ることなく、収容所へ送られたのです。

また、当時イチゴ農場で働いていたフィリピン人労働者は、日系人農場を離れざるを得なくなり、北部の先住民（ファースト・ネーション）が経営する農場へ移りました。この過程で、フィリピン系と先住民系の血を引く子供たちも生まれています。

自治体としてのベインブリッジアイランド市は、1991年2月28日に発足しました。これは、それまでイーグルハーバーにあったウィンズロー市（1947年設立）が島の残りの地域と合併したことによるものです。1960年代以降、島はシアトル近郊の住宅地として発展してきましたが、市は緑地帯の保全に力を入れ、商業開発や住宅開発には厳しい規制を設けることで、島の自然環境と景観を守る取り組みを行っています。

人口

2020年の人口は24,825人ですが、2000年の国勢調査によると、当時の人口は約20,308人でした。約8千世帯が暮らし、人口密度は1平方キロメートルあたり約284人でした。人種構成は白人が9割以上を占める一方、ネイティブ・アメリカン、アジア系、混血の人々など多様な背景を持つ住民も暮らしており、ヒスパニックまたはラテン系の人々は全体の2%強でした。世帯構成では、子供と同居する夫婦世帯が約6割を占めるなど、家族単位での居住が多い傾向が見られました。平均年齢は43歳で、比較的落ち着いた年齢層が中心となっています。2000年時点のデータでは、世帯収入の中央値は約8万8千ドル、家族収入の中央値は約10万8千ドルと比較的豊かですが、人口の約3%、家族の約4.4%は貧困線以下の生活を送っていました。

文化・名所

島には自然や歴史に関連する名所が点在しています。広大な緑地を持つブローデル・リザーブは自然愛好家に人気のスポットです。ベインブリッジ島日系アメリカ人排除記念碑は、第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容という痛ましい歴史を後世に伝えるための施設です。ベインブリッジ島歴史博物館では、島の豊かな歴史について学ぶことができます。また、作家デイヴィッド・グターソンの小説『ヒマラヤ杉に降る雪』（映画化もされた）は、この島の歴史、特に第二次世界大戦中の出来事を背景にした作品であり、作者自身も島に住んでいます。

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