ベスト・オブ・エネミーズ -価値ある闘い-

『ベスト・オブ・エネミーズ〜価値ある闘い〜』 (The Best of Enemies)

概要

2019年に制作されたアメリカ合衆国のドラマ映画です。監督はロビン・ビセルが務め、これが長編映画監督デビュー作となりました。主演はタラジ・P・ヘンソンとサム・ロックウェルです。

本作は、ノンフィクション作家オシャ・グレイ・デヴィッドソンが1996年に発表した同名書籍『The Best of Enemies: Race and Redemption in the New South』を原作としています。

日本では劇場公開はされず、2019年12月4日からデジタル配信が開始されました。

あらすじ

物語の舞台は1971年のノースカロライナ州ダーラム。この地では、学校における人種隔離政策を巡り、住民間の対立が激化していました。差別撤廃を訴える公民権運動家グループと、既存の分離政策を支持する白人住民グループが互いに譲らない状況でした。

事態打開のため、地元の行政機関は対立する双方の代表者を招き、協議会を開催することを決定します。この協議の中心となったのは、公民権運動のリーダーであるアン・アトウォーター（黒人女性）と、地元のクー・クラックス・クラン（KKK）の幹部であるC・P・エリス（白人男性）という、全く異なる立場にいる二人でした。

当初、誰もがこの協議が実を結ばず、ただ対立を深めるだけだと予想しました。しかし、アン・アトウォーターとC・P・エリスには、労働者階級出身であることや、家族に関する個人的な悩みを抱えているといった人間的な共通点が存在しました。こうした共通点が、彼らの敵対関係に予期せぬ変化をもたらし、やがて奇妙な友情が芽生えるきっかけとなります。

二人の間に生まれたこの絆は、彼ら自身の固定観念や人生観を大きく変えただけでなく、長年分断されていたダーラムのコミュニティ全体に影響を与え、その未来を塗り替える原動力となっていきました。本作は、実話に基づき、対立の中から生まれる理解と和解の可能性、そして人間的な繋がりが持つ力を描いた物語です。

キャスト

主要キャストと日本語吹替版担当者は以下の通りです。

アン・アトウォーター：タラジ・P・ヘンソン（浅野まゆみ）
C・P・エリス：サム・ロックウェル（内田夕夜）
ビル・リディック：バボー・シーセイ（野川雅史）
ガーランド・キース：ニック・サーシー（早川毅）
カーヴィー・オールダム：ブルース・マッギル（堀越富三郎）

その他、メアリー・エリス役のアン・ヘッシュなどが出演しています。

製作・公開・興行

本作は、主演の一人タラジ・P・ヘンソンの参加が報じられた2015年6月頃から企画が進み、2017年5月よりジョージア州で主要撮影が行われました。同年6月にはキャストにケイトリン・メーナーが加わっています。

全米配給権は2018年7月にSTXエンターテインメントが取得し、2019年4月5日に公開されました。公開初週末は全米1705館で445万ドルを記録し、週末興行収入ランキングで初登場7位となりました。この初動は、配給会社STXエンターテインメントの作品としては比較的低調な部類に入るとされています。

評価

映画批評家からの本作への評価は賛否両論といった状況です。

批評集積サイト「Rotten Tomatoes」では、66件のレビューに基づく批評家支持率が52%に留まりました。平均点は6.02点（10点満点中）です。サイトの総評では、テーマの重要性は認めつつも、物語の視点や掘り下げ不足を指摘する声が見られました。

一方、「Metacritic」では、25件のレビューに基づいた加重平均値が49/100となっています。

しかし、一般の観客からの評価はより好意的で、出口調査に基づく「CinemaScore」では「A」を獲得しています。この結果は、実話の持つ力や、タラジ・P・ヘンソンとサム・ロックウェルによる主演二人の演技が観客に強く響いたことを示唆しています。

ベスト・オブ・エネミーズ -価値ある闘い-