ベニシャングル・グムズ州

ベニシャングル・グムズ州：多民族が混在するエチオピアの辺境

ベニシャングル・グムズ州は、エチオピアの北西部に位置する州で、その面積は5万699平方キロメートルに及びます。2023年の推定人口は125万1000人で、人口密度は1平方キロメートルあたり24.7人と、比較的低い地域です。この州の大きな特徴は、単一の多数派民族が存在せず、ベルタ人、アムハラ人、グムズ人など、多様な民族が混在している点です。そのため、民族間の対立や紛争が絶えず、社会情勢は不安定な状況が続いています。

歴史的背景

ベニシャングル・グムズ州は、1995年にエチオピアの民族再編によって誕生しました。それ以前は、複数の民族が混在する地域として存在していましたが、再編によって西部の諸民族がまとめられ、現在の形となりました。この歴史的背景が、土地や資源をめぐる民族間の対立を生み出す要因となっています。

2019年6月には、アムハラ州でクーデター未遂事件が発生し、その首謀者の一派が州北部のメテケル県に侵入し、37人もの村人を殺害するという痛ましい事件が起きました。さらに、2020年9月以降はメテケル県で民族系の武装組織による衝突が激化し、国軍が介入する事態にまで発展しました（ベニシャングル・グムズ紛争）。この紛争では、特定の民族住民に対する攻撃が頻発し、同年11月には住民が乗ったバスが襲撃され34人が死亡、12月には武装組織が100人以上の村人を虐殺するという悲惨な事件が相次ぎました。2021年4月には、州中部のカマシ県シルバ・アバイ郡が武装組織に占拠され、住民の殺害や公務員の誘拐が相次ぎました。この地域は、大エチオピア再生ダムの建設予定地の上流に位置しており、紛争がダム建設に悪影響を与える可能性が懸念されています。

地理と行政区画

ベニシャングル・グムズ州は、北から東にかけてアムハラ州、南にオロミア州、南西に南スーダンの上ナイル州、西から北西にかけてスーダンの青ナイル州と隣接しています。州内は、アソサ県、カマシ県、メテケル県の3つの県に分かれており、さらにその下に郡（Woreda）が置かれています。また、マオ＝コモ特別郡とパウェ特別郡の2つの特別郡は、どの県にも属していません。

住民構成

民族構成は非常に複雑で、ベルタ人が25.9%、アムハラ人が21.25%、グムズ人が21.11%、オロモ人が13.32%、シナシャ人が7.59%、その他が10.83%を占めています。2020年には、メテケル県でアムハラ人の指導者の一部が土地所有権を主張し、グムズ人との間で対立が生じました。

宗教に関しては、エチオピア正教が95.6%と圧倒的な多数を占めていますが、イスラム教も4.0%存在しています。

人口は、1994年の46万459人から2023年には125万1000人へと増加しています。

インフラと経済

ベニシャングル・グムズ州は、手つかずの自然が残る一方で、通信や交通インフラが脆弱であり、経済発展の大きな障害となっていました。しかし、近年は中国資本による整備・開発が進められています。特に、大エチオピア再生ダム（GERD）は、州の南西隅の青ナイル川で建設が進められており、国家的なプロジェクトとして注目されています。

紛争と社会情勢

上述の通り、ベニシャングル・グムズ州では、民族間の対立や紛争が頻発しており、多くの人々が犠牲となっています。2020年以降、メテケル県を中心に紛争が激化し、民間人への攻撃や虐殺事件が相次ぎました。この状況は、州全体の安定を損ない、経済開発にも大きな影響を与えています。国際社会からの注目も高まっており、紛争の解決と復興に向けた努力が求められています。

ベニシャングル・グムズ州は、豊かな自然と多様な民族文化を持つ一方で、民族紛争やインフラの未整備といった課題も抱えています。この地域が安定を取り戻し、平和な発展を遂げることが期待されます。

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