古関金子

古関金子（こせき きんこ）：多才な才能を開花させた女性

古関金子（旧姓：内山）は、1912年3月6日に愛知県渥美郡高師村（現在の豊橋市）で生まれました。父は、陸軍に物資を納入する商店を営んでいましたが、金子が12歳の時に他界。その後は母が家業と子育てを担いました。幼い頃から音楽と文学に親しみ、オペラ歌手を目指していたという金子は、お転婆な性格だったと言われています。

結婚前の歩み

豊橋高等女学校を卒業後、「女人芸術」に参加し、中部地方委員を務めました。また、満州に渡っていた兄を訪ねた際、帰りの客船が座礁・沈没するという危機にも遭遇しています。1930年、新聞記事で作曲家・古関裕而の存在を知り、手紙を送ったことをきっかけに遠距離恋愛が始まりました。当時の報道では古関の入賞は二等とされていましたが、実際には入選漏れだった可能性が高いとされています。しかし、古関は金子を「私のクララ」と呼び、彼女の詩に曲をつけたり、多くの楽曲を彼女に捧げ、共に音楽活動を行うことを夢見ていました。同時期に金子は、生活を支えるために雑誌編集の手伝いをしながら、声楽の勉強にも励みました。

結婚、そして声楽家としての開花

1930年6月、古関が金子を訪ねて豊橋へ。そのまま二人は結婚し、上京しました。古関は日本コロムビアの専属作曲家となり、金子は帝国音楽学校で本格的に声楽を学び始めます。ベルトラメリ能子に師事し、その才能は中山晋平にも絶賛されたほどでした。1931年に長女を出産したため一時学校を中断しますが、1934年に二女出産後、声楽の勉強を再開。ベルトラメリ能子の一番弟子として、『カヴァレリア・ルスティカーナ』、『アイーダ』、『トスカ』などのオペラに出演し、その実力を発揮しました。

戦時中は疎開を余儀なくされるも、戦後は活動を再開。古関作曲の放送オペラに出演するなど、声楽家としてのキャリアを築きました。また、1958年には「婦人文芸」に参加し、詩や随筆を発表。1965年には詩誌『あいなめ』の同人となり、自作をまとめた詩集を刊行しました。さらに、株取引にも長けており、女性トレーダーとして証券業界でも知られていました。1971年には油絵の裸婦像『揺炎』が新槐樹社展に入選するなど、多岐にわたる才能を発揮しました。

晩年と死後

1976年に乳がんが発見され、闘病生活を送りましたが、1980年7月23日に68歳でこの世を去りました。その生涯は、2020年に放送されたNHK連続テレビ小説『エール』で描かれ、多くの人々に知られることとなりました。

作品

* 『極光-詩集』（跋 金子光晴、あいなめ叢書） あいなめ会、1969年




古関金子は、声楽家、詩人、そして一人の女性として、その多才な才能と波乱に満ちた生涯で、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

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